DAS-ELISA法(エライザ法)

 
 
  1. メニュー

  2. (1)原理と種類

  3. (2)準備

  4. (3)実際の手順

  5. (4)注意点

  6. (5)粘着トラップを用いた検出(応用)


(1) 原理 と種類

 抗原抗体反応を利用します。このため、検出対象となるウイルスに特異的な抗体が必要です。用いる抗体の種類により直接ELISA、DAS-ELISA、TAS-ELISAなどがありますが、それぞれ操作が異なるため、注意が必要です。詳しくはこちらをご参照ください。


(2) 準備

抗体

全ての種類の抗体が手に入るわけではありませんが、主な抗体は以下で販売しています。(クリックするとそれぞれのサイトに移ります)

  1. 箇条書き項目 日本植物防疫協会

  2. 箇条書き項目  Agdia(直接購入するより割高となるが、和光が代理店をしている)

  3. 箇条書き項目  DSMZ (ドイツ細胞バンク、上記2つに無い抗体も用意されている)

どんなウイルスの抗体があるかは、それぞれのサイトをご参照ください。


試薬

  1. 箇条書き項目 炭酸バッファー [Carbonate Buffer (0.05M  pH9.6)]

  2. Na2CO3(無水)  0.80g    (0.015M)

  3. NaHCO3    1.47g    (0.035M)


  1. 500mlの蒸留水に溶解する(pH調整不要)

  2.    (腐敗防止のためにNaN3  0.1gを加えると良い。入れない場合は冷蔵する)


  1. 箇条書き項目 PBST (0.02M  pH7.4)

  2.   NaCl    8.0g

  3.   KH2PO4     0.2g

  4.   Na2HPO4・12H2O    2.9g

  5. KCl    0.2g

  6. 1000mlの蒸留水に溶解した後、Tween20(相当品でも良い)を0.5ml加える。

  7. (意外と多く消費するので、10倍濃度で作成しておき、必要なときに薄めておくと良い)


  1. 箇条書き項目 クエン酸バッファー [ Citrate buffer (0.1M) ] (DAS-ELISAでは使わない)

  2. Trisodium Citrate Dihydrate   29.41g

  3. Mercarpto Acetic Acid          0.5ml


  1. 1000mlの蒸留水に溶解する(pH調整不要)


  1. 箇条書き項目4) ジエタノールアミン溶液 [Diethanol amine Substrate Buffer(pH9.8)]

  2. Diethanol amine    48.5ml

  3. 蒸留水              400ml

  4. よく混合し、1N HCl (約30ml) でpH9.8に調整する

  5. 蒸留水で500mlに調整した後、

  6. MgCl2・6H2O          50mg

  7. NaN3                 0.1g       を加える


器具

  1. 箇条書き項目マイクロタイタープレート(96穴)住友ベークライトのMS-8696F推奨

  2. 箇条書き項目マイクロピペット(20μl〜200μl用、マルチチャンネルのものが便利)

  3. 箇条書き項目マイクロチップ(20μl〜 200μl用)

  4. 箇条書き項目マイクロプレートリーダー(吸光値測定用)

  5. 箇条書き項目冷蔵庫(4〜10℃,プレート保管用)

  6. 箇条書き項目恒温器(37℃常温,抗体吸着,インキュベーション用)


(2) 実際の手順


ここでは、一般に使われているDAS-ELISAを紹介します。(参考:日本植物防疫協会)

  1. 1.コーティング液(一次抗体)をカーボネート緩衝液で所定濃度に希釈 し,マイクロプレートの各穴に200μlずつ分注する。

  2. 2. 37℃で3時間または4℃で1晩静置する。

  3. 3.マイクロプレートのコーティング液を捨てる

  4. 4.PBSTを適量入れ、捨てるという操作(洗浄)を4回繰り返す (試料準備)

  5. 5.検定試料を0.1g程度とり、10倍量のPBSTで磨砕し、マイクロチューブ に入れる。この際、必ず、非感染の植物(ネガティブコントロール)と感 染の分かっている植物(ポジティブコントロール)を用意し、同様の処理 をする)

  6. 6.遠心分離(10,000 rpm 1 min程度)

  7. 7.上澄みを200μlずつ分注する。

  8. 8.37℃で3時間または4℃で1晩静置する

  9. 9.マイクロプレートをPBSTで4回 洗浄する。

  10. 10.コンジュゲート液(二次抗体)をPBSTで所定濃度に希釈し,マイクロ プレートの各穴に200μlずつ分注する。

  11. 11.37℃で3時間または4℃で1晩静置する

  12. 12.マイクロプレートをPBSTで4回洗浄する。

  13. 13.P-ニトロフェニルリン酸2ナトリウム(基質)をジエタノールアミン 溶液20mlに溶解する。(使い切る)

  14. 14.200μlずつ分注する。

  15. 15.光が入らないようにアルミホイルをかぶせ、室温に置く

  16. 16.30分後、405 nmの吸光度値を測定する

  17. 17.1回目の測定で十分発色が得られていない場合は、120分後、 もう一 度405 nmの吸光度値を測定する (結果判定)


(4) 注意点

  1. 箇条書き項目陽性の判断基準は?

  2. ELISAでは必ずネガティブコントロールをとってください。 雑草、キク、イモ類などは非得意反応がでやすいとされているので、必ずネガティブコントロールを用意してください。 植物病理の分野では、ネガティブの吸光値の2〜3倍を示すものを陽性と判断することが多いようです。ウイルスの診断をする場合には、ネガティブは非得意反応が無いことの確認ですので、これで問題ないと思います。しかし、媒介昆虫の獲得率や無病徴感染のように値が低いものの場合は、 統計的にはネガティブの平均値+SD*3以上を陽性と見なすべきだと考えます。その場合には、ネガティブは5〜10反復は必要になります。

  3. 箇条書き項目プレートについて

  4. 実は、最近までプレートは研究室にあった古いものを使っていたのですが、陽性コントロールが出なかったり、陰性が出てしまったりと不思議な反応をしたため、新しいプレートを購入して比較してみました。すると、変な反応は古いプレートに特有で、新しいプレートはバックグラウンドも低く非常に良好でした。考えてみると、ELISAにはタンパク質を吸着するためのコーティングがされており、当然、経時劣化すると思われます。また、プレートの種類により、吸着性、バックグラウンドも多少差があるようです。こちらにあるような、微妙な試験の場合は、なるべく良い(おすすめは住友ベークライトのMS-8696F)ものを使いましょう。

  5. 箇条書き項目Blockingについて

  6. 植物ウイルスのELISAでは通常、非得反応を抑えるBlockingはしないようです。経験的に、ほとんど問題ありませんが、反応が微妙な場合はBlockingをした方が良いようです。昆虫からのウイルス検出には、Blocking操作を加えておきました。