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葯培養由来で低アミロースの水稲新品種候補系統「熊本A25号」


[要約]
水稲「熊本A25号」は黄金晴/関東168号(後の「ミルキークイーン」)のF1を葯培養して育成した中生の低アミロース系統で、耐倒伏性が強く、良質、極良食味である。熊本県の平坦肥沃地の普通期作及びい草、たばこ後等晩期作への普及が見込まれる。

[キーワード]
水稲、熊本A25号、葯培養、中生、低アミロース、極良食味

[担当]

熊本農研セ・農産園芸研究所・作物部

 [連絡先]096-248-6444
 [区分]九州沖縄農業・水田作
 [分類]技術・普及

[背景・ねらい]
熊本県の平坦肥沃地の普通期作及びい草、たばこ後等晩期作は、地力窒素や前作の残留窒素が多量に発現するため、既存の粳良食味品種では食味改善が難しい。低アミロース米は、これらの条件でも優れた食味を発揮することが期待できるため、普通期作及び晩期作に適する中生で倒伏に強い低アミロース品種の育成を行う。

[成果の内容・特徴]
「熊本A25号」は、1993年、熊本県農業研究センターにおいて、「黄金晴」を母、「関東168号」(後の「ミルキークイーン」)を父として人工交配した組み合わせに由来し、葯培養法を利用して育成された。本系統の特性は以下のとおりである。

  1. 早晩性は「ヒノヒカリ」より出穂期で2日、成熟期で4日早い“中生の早”である(表1)。

  2. 草型は“中間型”である。「ヒノヒカリ」と比較して稈長は短く、穂長及び穂数は同程度である。耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より強く“強”である(表1)。

  3. 芒の多少は“やや少”、長短は“中”である。脱粒性及び穂発芽性は“難”である(表1)。

  4. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii”を持つと推定され、葉いもち圃場抵抗性は“中”、穂いもち圃場抵抗性は“やや弱”である。白葉枯病抵抗性は“弱”である(表1)。
  5. 玄米収量は「ヒノヒカリ」と同等かやや少ない。

  6. 玄米千粒重は「ヒノヒカリ」よりわずかに軽い。玄米は薄く濁り、乳白等の白濁粒の発生が少なく、品質は「ヒノヒカリ」より優れる(表1)。

  7. アミロース含有率は10%前後である。飯米は光沢及び粘りが強く、加水量をやや減じた場合の食味総合評価は「ヒノヒカリ」より優れる極良食味である。混米素材としても優れ、「日本晴」との等量混米の食味は「ヒノヒカリ」並みである(表1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 熊本県の平坦肥沃地の普通期作及びい草、たばこ後等晩期作への普及が見込まれる。

  2. 白葉枯病に弱いので、常発地での栽培を避ける。

  3. いもち病抵抗性は十分でないので、適期防除に努める。

[具体的データ]

表1  「熊本A25号」の特性一覧

[その他]
研究課題名:水稲の優良品種育成
予算区分 :県単
研究期間 :1993〜2000年度

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