秋播型早生小麦「イワイノダイチ」の品種特性
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[要約]
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秋播型早生小麦「イワイノダイチ」は、早播や地域によっては5月末に収穫が可能である。「イワイノダイチ」は「農林61号」に比べて幼穂凍死が極めて少なく、耐倒伏性、耐穂発芽性が優れ、外観品質も安定して優れ、播種適期巾が広い。収量は優れ、千粒重は重く、製粉・製めん適性は同程度に優れている。
- [キーワード]
- 秋播性、イワイノダイチ、小麦、準奨励品種、早播、早生
- [担当]
- 福岡農総試・農産研究所・栽培部・作物品種研究室、豊前分場・普通作物・野菜研究室、筑後分場・水田高度利用研究室
[連絡先]092-924-2848、0930-23-0163、0944-32-1029
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 麦の民間流通において、高品質小麦の安定生産が重要視されており、収穫期の雨害が回避できる作型の開発および品種の作付けが緊急な課題となっている。このため、早生種で早播にも適応性が高い秋播型優良小麦品種が農家及び関係機関から強く望まれている。そこで秋播型早生小麦品種「イワイノダイチ」について福岡県での地域適応性を検討し、特性を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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「イワイノダイチ」(交配親:秋9/西海168号九州農業試験場育成)は「農林61号」に比べて次のような特性を有する。
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秋播性はIVと高く、出穂期は6日、成熟期は4〜6日程度早い早生種で、「チクゴイズ」ミと同程度の成熟期である。早播や地域によっては5月末に収穫が可能である(表1)。
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褐ぷで、稈長は6cm程度短く、穂数は多い(表1)。
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耐倒伏性は優れ、特に倒伏関連形質のチェイン法によるcLr値が大きい(表2)。
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穂発芽性は同程度の「難」で、チクゴイズミより明らかに優れる(表2)。うどんこ病や赤かび病は同程度の「中」である(データ略)。
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容積重や千粒重は重く、収量は優れ、検査等級も安定して優れる(表1)。
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早播による幼穂凍死率は農林61号、チクゴイズミより明らかに少ない(表2)。
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粉の最高粘度と民間流通で重視されるフオリングナンバーは各々安定して高く、大きい(表3)。
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製粉特性は、製粉歩留は高く、粗タンパク質含有率は同程度である。粉の色は良好で、澱粉の粘性が優れている。製めん適性は同程度である(表4)。
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[成果の活用面・留意点]
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「イワイノダイチ」は県下の平坦地に普及が図れる。
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11月下旬の標準播が主要な播種時期であるが、早播にも適応できる。
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[具体的データ]
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表1 生育、障害及び収量

表2 早播における各種障害と倒伏関連形質

表3 早播における最高粘度とフォリングナンバー

表4 製粉特性及び製めん適性
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[その他]
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研究課題名:麦類奨励品種決定調査
予算区分 :経常
研究期間 :1996〜2000年度
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