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早播きした秋播性小麦「イワイノダイチ」の追肥時期の改良


[要約]
早播き栽培では、イワイノダイチはチクゴイズミより幼穂形成期や茎数が減少し始める時期が遅く、これに応じて追肥時期を遅らせることによって収量が向上する。

[キーワード]
秋播性小麦、イワイノダイチ、収量、追肥時期、早播き栽培

[担当]
九州沖縄農業研究センター・水田作研究部・栽培生理研究室

 [連絡先]0942-52-0670
 [区分]九州沖縄農業・水田作
 [分類]技術・参考

[背景・ねらい]
暖地の小麦作においては、収穫期の雨害および水稲作との作業競合の回避の観点から、収穫期の早期化が強く求められている。このための栽培技術として早播きが有効であることが示唆されてきたが、これまでの品種は秋播性程度が低いため早播きすると茎立ちが早まり、凍霜害が発生することがあった。一方、九州農業試験場で育成された秋播性小麦「イワイノダイチ」は茎立ちが遅いが出穂期は早いため、凍霜害回避型早生小麦として期待されている。本研究では、早播きしたイワイノダイチの生育特性を明らかにし、それに応じた追肥法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 早播き栽培では、イワイノダイチはチクゴイズミと比較して二重隆起形成期(幼穂形成期)や頂端小穂形成期(1穂小穂数の決まる時期)が遅いが、出穂期、成熟期はほぼ同じとなる(表1)。

  2. 早播き栽培では、イワイノダイチはチクゴイズミと比較して分げつ数が著しく多く、茎数が減少し始める時期が遅いが、穂数はほぼ同じとなる(図1)。

  3. 標準追肥法による早播き栽培では、イワイノダイチはチクゴイズミよりも1穂粒数が少ないため、有意差は認められないものの子実重はやや少ない(表2)。

  4. 追肥時期を遅らせた改良追肥法では、両品種とも1穂粒数が増加するために子実重が増加する。特にイワイノダイチは子実重の増加が顕著である(表3)。

  5. 改良追肥法では、両品種とも容積重がやや減少する。原麦の蛋白質含量はやや増加するものの有意差は認められない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. イワイノダイチの早播き栽培における追肥法の参考となる。

  2. 追肥法が品質に及ぼす影響についてはさらに検討する必要がある。

  3. 早播き栽培における標準追肥法とは、標準期播きにおける追肥時期(1月下旬と2月下旬)と葉齢がほぼ同じ時期(12月下旬と2月上旬)に施肥する追肥法とした。

  4. 水稲作後の灰色低地土における試験結果である。

[具体的データ]

表1 標準追肥法における生育経過


表2 標準追肥法における収量・収量関連形質


表3 収量・収量関連形質の追肥法比較


図1 標準追肥法における茎数の推移(1998年播試験)

[その他]
研究課題名:暖地における作期の拡大に応じた麦類の生育制御技術の開発
予算区分 :21世紀プロI系
研究期間 :1999〜2004年度

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