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麦畦を利用した大豆不耕起播種における土壌条件と発芽苗立ち


[要約]
麦畦を利用した大豆不耕起播種(播種溝部分耕方式)は、耕起播種に比べて降雨による土壌水分の変動は大きいが、土膜が形成しにくいことや降雨後の排水が速いことから、播種時の土壌水分が高くても、耕起播種よりも発芽苗立ちが優れる。

[キーワード]
大豆、不耕起播種、麦畦、土壌水分、発芽苗立ち

[担当]
佐賀農業試セ・栽培技術部・作物研究室

 [連絡先]0952-45-2141
 [区分]九州沖縄農業・畑作
 [分類]技術・参考
 

[背景・ねらい]
九州北部平坦における大豆の播種適期は7月上中旬で梅雨と重なるため、降雨により耕起作業が行えず播種作業が遅れたり、土壌の過湿や過乾燥により発芽苗立ちが劣りやすく、天候に左右されない全天候型播種技術の開発が望まれている。前作の麦畦を耕さずにそのまま利用する大豆不耕起播種(逆転ロータリ爪による播種溝部分耕方式)は、計画的な播種作業の実施や不良条件での安定した発芽苗立ちで全天候型と期待される技術であるが、その機作は未解明である。そこで、麦畦を利用した不耕起播種(播種溝部分耕方式)における土壌条件が発芽苗立ちにおよぼす影響について解明する。

[成果の内容・特徴]
  1. 九州北部の埴土地帯において、大豆は土壌含水比が20〜40%では耕起播種、不耕起播種(播種溝部分耕方式)ともに概ね良好な発芽苗立ちが得られるが、土壌含水比が40%を超えると耕起播種の発芽苗立ちが劣る。しかし、麦畦を利用した不耕起播種では多湿条件での発芽苗立ちの低下が小さく、苗立率が70%以下に低下することが少ない(図1)。

  2. 播種当日と前後2日を合わせた5日間の降水量が50mmを超えると発芽が不安定となる(データ略)。

  3. 埴土では降雨により土壌表面が叩かれて土膜を形成し硬度が増し、苗立率が低下する(データ略)。降雨によって不耕起播種における土壌硬度は増加するが、耕起播種に比べるとその程度は少ない(図2)。

  4. 播種直後における播種位置の土壌水分は、不耕起播種では耕起による土壌水分の均一化が行われないため、耕起播種に比べ天候にともなう変動が大きくなる(図3)。

  5. 播種時は湿潤条件で播種後乾燥にあった場合、不耕起播種では耕起播種に比べ排水が速やかに行われ土壌水分が低くなり過乾燥が心配されるが、麦ワラ量が多いと土壌水分が高く保たれ、麦畦利用では地表に残った麦ワラによる保水効果が期待できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本情報は、土壌水分に基づく不耕起播種作業の適否判定に利用できる。

  2. 播種位置の土壌条件の測定は、不耕起では播種溝内の土壌で行ったため、不耕起部分の土壌条件は不明である。

[具体的データ]

図1 播種法の違いによる土壌水分と大豆の苗立


図2 播種法の違いによる土壌表面の土壌硬度


図3 不耕起播種と耕起播種における播種位置の土壌水分の推移


図4 不耕起播種と耕起播種におけるワラの多少と播種後の土壌水分の推移

[その他]
研究課題名:新たな米生産調整拡大に対応した水田転作大豆の高生産技術
予算区分 :助成試験(地域基幹)
研究期間 :1999〜2003年度

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