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カンショ葉の総ポリフェノール含量およびポリフェノール組成


[要約]
カンショには葉部の総ポリフェノール含量が一般野菜を上回る系統が多数ある。カンショ葉部にはカフェー酸およびその誘導体5種類が含有されており、これら6物質の中で最も多く含まれている物質は3-O-,5-O-ジカフェオイルキナ酸である。

[キーワード]
カンショ、葉、ポリフェノール、カフェー酸誘導体、カフェオイルキナ酸

[担当]
九州沖縄農研・畑作研究部・畑作物変換利用研究室、サツマイモ育種研究室

 [連絡先]0986-22-1506
 [区分]九州沖縄農業・畑作、流通加工
 [分類]科学・参考
  

[背景・ねらい]
カンショ茎葉は繰り返し収穫が可能という大きな利点を持つが、これまで積極的な利用はされていない。その背景としては成分研究が進んでいない実状がある。本研究では、カンショ茎葉の用途拡大のための知見を得るために、抗酸化活性など種々の機能性が明らかになっているポリフェノールに着目し、広範なカンショ系統についてその含量及び組成を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. カンショの系統1384種類の中では、葉部総ポリフェノール含量が凍結乾燥試料100g当たり4.5〜6.0gの範囲に分布する系統が最も多く529種類ある(図1)。葉部総ポリフェノール含量が最も多い系統は17.1gであり、1384種類の平均は5.9gである。塊根を利用する品種である「コガネセンガン」と「高系14号」の葉部総ポリフェノール含量は3.0g以下である。また、12種の市販野菜の可食部総ポリフェノール含量は0.3g(ニンジン)〜4.6g(シュンギク)の範囲にある(表1)。カンショ遺伝資源には、葉部総ポリフェノール含量が市販野菜を上回る系統が多数ある。

  2. カンショの一系統の茎葉より単離したポリフェノール成分は、クロロゲン酸、4-O-,5-O-ジカフェオイルキナ酸(4,5-CQA)、3-O-,5-O-ジカフェオイルキナ酸(3,5-CQA)、3-O-,4-O-ジカフェオイルキナ酸(3,4-CQA)、及び3-O-,4-O-,5-O-トリカフェオイルキナ酸(3,4,5-CQA)の5種類のカフェー酸誘導体である(図2)。これらはいずれもカフェー酸(カフェイン酸またはコーヒー酸とも呼ばれる)を部分構造としてもつ。

  3. カンショの系統1384種類の内、総ポリフェノール含量が最も多い系統20種類の葉部は、いずれもカフェー酸および上記5種類の物質を含み、これら6物質の中で3,5-CQAを最も多く含んでいる(表2)。それぞれの含量についての、最高、最低及び平均は表2の通りである。

[成果の活用面・留意点]
  1. 茎葉部にポリフェノールを多く含有するカンショ品種を育成するための資料として、また、ポリフェノールを含む食品等をカンショ茎葉から製造するための資料として活用可能である。

  2. 総ポリフェノール含量及び各成分含量は、凍結乾燥試料についてのものであるので加熱乾燥試料中の含量を反映しているものではない。

  3. 総ポリフェノール含量及び各成分含量は、材料の栽培条件、収穫時期、購入時期及び保存条件によって変動する可能性がある。

[具体的データ]

図1 1384系統のカンショ葉部総ポリフェノール含量の分布


図2 カフェー酸およびその誘導体の構造


表1 市販野菜可食部の総ポリフェノール含量


表2 カンショ20系統葉部ポリフェノール類6成分の含量

[その他]
研究課題名:カンショの機能性成分の検索と特性解明、カンショの薬理成分の同定と特性解明
予算区分 :交付金、21世紀プロ4系
研究期間 :1998〜2001年度

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