セラミックスを担体とした生物膜法と土壌濾過を組み合わせた浄化処理法
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[要約]
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セラミックスを用いた生物膜法では、標準活性汚泥法より少ない維持管理で運転が可能であり、さらに土壌濾過と組み合わせることにより年間を通じた水質汚濁物質の除去が可能となる。
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- 生物膜法、土壌濾過、セラミックス、黒ボク土
- [担当]
- 佐賀県畜産試験場・中小家畜部・養豚環境研究室
[連絡先]0954-45-2030
[区分]九州沖縄農業・畜産草地、中小家畜
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 家畜尿汚水の浄化処理方法は、微生物を利用した生物処理が広く利用されており、なかでも、活性汚泥法が一般的に利用されているが、汚泥の維持管理が難しいため、十分に活用されていない場合が多い。また、生物処理では、窒素、リン等の無機成分および難分解性の色素成分の除去には限界があり、河川等への放流時には、脱色等の高次処理の必要性が指摘されている。佐賀県ではセラミックス担体とする生物膜法の施設を導入しており、これは、固液分離機および沈澱槽で夾雑物除去を行う前処理、セラミックスを担体とした生物膜法による曝気処理、および黒ボク土等の土壌を濾過材とした高次処理からなる(図1)。この生物膜法の能力を検討するとともに、難分解性色素等残留無機成分の高次処理技術の開発を行う。
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[成果の内容・特徴]
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- 汚水を夾雑物除去後に曝気処理すると、生物化学的酸素要求量(以下BOD)は平均27mg/lに、アンモニア性窒素(以下NH4-N)は12.2mg/lに低下する。化学的酸素要求量(以下COD)は平均97.8mg/l、浮遊物質(以下SS)は50.3mg/lと高い浄化が確認されるが、水温が低下する12月以降の冬期においては曝気槽での処理水濃度は上昇する。亜硝酸性窒素+硝酸性窒素(以下NOX-N)も顕著に冬期の濃度が上昇する。全リン(以下T-P)は、濾過槽において平均9.1mg/lまで減少する(表1)。
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色度も他成分と同様に冬期に除去が低下するが、濾過槽における吸着が行われる(図2)。
- 水温が摂氏15度以上、BOD容積負荷が0.5kg/m3・日以下では安定した処理水の数値が得られるが、BOD容積負荷がそれ以上になると、浄化能力は低下する(図3)。
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[成果の活用面・留意点]
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希釈水が確保できない地域又、豚以外の畜種にも適応可能である。
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濾過槽の目詰まりの要因として、余剰汚泥が混入することが考えられるため、できるだけ上澄み液のみを投入するようにする。
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セラミックスの充填率は、20〜50%の範囲であれば処理能力に差はないが、充填率が少なくなると、余剰汚泥量は増加する。
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冬期における硝酸性窒素の除去ができていないので、窒素量の放流基準がある場合には、間欠曝気等による脱窒処理を行う必要がある。
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肥育豚1頭当たり、施設のイニシャルコストは約20,000円、ランニングコストは約70円/月である。
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[具体的データ]
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図1 汚水浄化処理施設フロー

図2 各処理槽における色度の経日動向

図3 曝気槽水温及びBOD容積負荷と処理水BOD濃度との関係

表1 処理過程における汚水水分平均値及び測定値範囲
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[その他]
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研究課題名:セラミックスを担体とした生物膜法と土壌濾過を組み合わせた浄化処理法
予算区分 :県単、助成試験(家畜排せつ物処理技術実用化調査事業)
研究期間 :1996〜2000年度
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