さつま地鶏の作出
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[要約]
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鹿児島県が保有する薩摩鶏♂と産卵性の優れたロードアイランドレッド♀を交配して系統造成した「さつま地鶏」は、それ同士の交配により完全有色羽装で、肉質がよく、脂肪が少ない優れた地鶏肉を生産することができる。
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- 肉用鶏、薩摩鶏、地鶏
- [担当]
- 鹿児島畜試・養鶏部
[連絡先]0995-48-2121
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
- 近年、輸入鶏肉の増加や産地間競争の激化等により、ブロイラー農家を取り巻く環境は、年々厳しくなっている。また一方では、食に対する安全性や品質の良いものを望むなど、消費者ニーズが多様化し、通常のブロイラーとは異なる高品質な鶏肉の需要が増加している。このような背景の中で、鹿児島県が保有する薩摩鶏を活用し、完全有色羽装で、肉質が良く、脂肪が少ないなど地鶏的要素を活かした鶏種の作出に取り組んだ。
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[成果の内容・特徴]
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8〜11世代の種鶏の性能調査を比較すると、育成率、体重、飼料消費量、受精率およびふ化率で改良された。(表1)
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肉用鶏の飼育後期のブロイラー用飼料では、腹腔内脂肪が多くなる傾向にあるため、CPとMEの飼料水準を検討した結果、CP18%-ME3000kcal/kg区で、対照区であるCP18%-ME3200kcal/kgに対して生産性は劣らず、腹腔内脂肪が少なくなる傾向だった。(表2)
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さつま地鶏とブロイラーの破断応力を同一日齢で比較すると、成熟の遅いさつま地鶏が軟らかかった。ブロイラーの出荷日齢(56日)とさつま地鶏の出荷日齢(98日)で比較すると、さつま地鶏が若干硬くなったものの差はなかった。(図2)
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鶏肉のうまみ成分の一つであるイノシン酸含量は、さつま地鶏とブロイラーとを比較すると、胸肉、もも肉ともにさつま地鶏のほうに多く含まれていた。(表3)
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二点識別法および二点嗜好法による官能検査の結果、鶏種間に差があり、ブロイラーよりもさつま地鶏を好むパネラーが多かった。(表4)
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[成果の活用面・留意点]
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県内2団体(維持増殖施設)に種鶏を譲渡し、県内を中心とした鶏肉生産および流通を図る。
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「さつま地鶏生産者協議会」を設立し、さつま地鶏の生産普及と消費の拡大およびさらなる飼育技術の改善と生産性向上を図る。
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これまで「かごしま地鶏」として試験課題に取り組んできたが、完成時に名称の一般公募を行い、平成12年10月16日に「さつま地鶏」と命名した。
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[具体的データ]
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図1 さつま地鶏交配図

図2 さつま地鶏とブロイラーの破断応力の比較

表1 種鶏の性能調査

表2 肉用鶏適正飼料水準試験・飼育成績および解体成績

表3 イノシン酸含有量の比較(μmol/g)

表4 二点識別法および二点嗜好法による官能検査
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[その他]
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研究課題名:かごしま地鶏の実用化に関する研究、かごしま地鶏の銘柄確立
予算区分 :鶏改良増殖推進事業
研究期間 :1997〜2000年度
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