褐毛和種体細胞クローン雄牛の受精能力
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[要約]
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生産した褐毛和種体細胞クローン雄牛の精液を採取し、その性状検査と採取した精液を凍結し、人工授精、体外受精により受精能力を調べたところ、それらは正常である。
- [キーワード]
- 体細胞クローン牛、精液性状、人工授精、体外受精、受精能力
- [担当]
- 熊本農研セ・畜研・生産技術開発部
[連絡先]096-248-6435
[区分]九州沖縄農業・バイテク
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
- 体細胞核移植技術の開発は、家畜の改良・増殖に有用であると期待されている。一方体細胞クローン牛には過大子、流早死産、奇形の発生や繁殖能力等まだまだ不明な所が多い。今回、生産した体細胞クローン雄牛2頭(NT1号、NT2号)の正常性について受精能力を調査した。
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[成果の内容・特徴]
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精液性状においては、NT1号、NT2号の順に1回当たり採取量1〜4.5ml、2.5〜7ml、精子数5〜33億/ml、10〜40億/mlであり、PH、活力はいずれも6.4〜7.2、30〜80+++であり、バラツキはあるものの、この値は正常な範囲内である。(表1)
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人工授精による受胎成績は、NT1号が100%(1/1頭)、NT2号が64.7%(11/17頭)で、これは、通常の人工授精における初回授精と同程度の受胎率である。(表2)
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分娩状況は、NT1号の産子が難産により死産(雄、28kg)で、NT2号の産子が雄2頭、雌6頭がすべて自然分娩により得られている。なお、放牧中の流産が1頭発生した。妊娠期間は平均で、生時体重も褐毛和種の平均生時体重と同程度である。(表3)
- 体外受精成績では、NT1号、NT2号、及びドナー細胞提供牛(光重ET号)の順に各々供試卵数537、636、120、体外受精2日目後の分割数407(75.8%)、500(78.6%)、91(75.8%)、胚盤胞発生数191(35.6%)、252(39.6%)、41(34.2%)であり通常の発生とほぼ同程度である。(表4)
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以上のことから、体細胞クローン牛の受精能力は正常である。
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[成果の活用面・留意点]
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生産した産子を用い、産肉能力検査及び繁殖性の調査を行う。
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体細胞クローン牛の正常性のデータの一助とする。
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[具体的データ]
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表1 精液性状検査成績(1回当たり)

表2 人工授精による受胎成績

表3 産子の状況

表4 体外受精成績
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[その他]
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研究課題名:牛の細胞核移植技術の開発・高度化
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2004年度
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