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ビタミンA投与による血中硝酸態窒素濃度の低減効果


[要約]
急性硝酸塩中毒未経験牛にビタミンA300万単位を経口投与することにより、体重1kg当たり0.15gの硝酸塩を摂取しても血中硝酸態窒素濃度の上昇を抑制する効果が得られる。

[キーワード]
ビタミンA、硝酸塩中毒、乳牛

[担当]
大分畜試・酪農・環境部

 [連絡先]0974-76-1216
 [区分]九州沖縄農業・畜産・草地
 [分類]技術・参考
  

[背景・ねらい]
わが国では、酪農の多頭経営が進展しはじめた1960年頃から乳牛における硝酸塩中毒の発生が報告され、現在でも、糞尿の過剰施用との関連から硝酸塩中毒に対する危険性が指摘されている。硝酸塩中毒では、急性の場合は発症後数時間で死亡し、慢性の場合には流産、起立不能、乳量の低下を起こし、いずれの場合にも経済的に大きな損失をもたらし経営を圧迫する原因となる。そこで、ルーメン内の硝酸塩の分解に有効と考えられるビタミンAの経口投与による硝酸塩中毒の発症防止の可能性について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. ビタミンA300万単位を4日間経口投与した急性硝酸塩中毒未経験牛(以下、未経験牛)に対し、硝酸ナトリウム(NaNO3)0.15g/kgを経口投与すると、血漿中硝酸態窒素濃度が対照区の牛よりも低く推移する(図1)。

  2. 急性硝酸塩中毒経験牛(硝酸ナトリウム1回投与後、10日後に再投与し中毒した牛で以下、経験牛)では、ビタミンAを投与しても硝酸塩投与に対する血漿中硝酸態窒素濃度の上昇は抑制されない(図2)。

  3. 未経験牛では、ビタミンA300万単位の投与により、中毒血漿中ビタミンA濃度が12.20μg/dlから37.42μg/dlに約3倍上昇するが、経験牛では19.92μg/dlから23.83μg/dlとほとんど上昇しない(表1)。

  4. 未経験牛に硝酸塩を投与すると、GOT(グルタミン酸オキザ酢酸トランスアミナーゼ)が有意に上昇して、肝機能に異常が認められたのに対し、ビタミンAを投与することによりGOTに異常が認められなくなる(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 硝酸塩の集積が懸念される飼料を給与せざるを得ない場合の対策となる。

  2. 硝酸塩中毒経験牛に対しては硝酸塩中毒を助長する可能性もあることから、慢性硝酸塩中毒が予想される地域では、ビタミンAを要求量以上に投与しない。

[具体的データ]

図1 硝酸塩中毒未経験牛


図2 硝酸塩中毒経験牛
表1.中毒未経験牛の血漿中ビタミンA濃度の推移   µg/dl
区  分 硝酸塩投与後の経過時間 平均
10 12 24
中毒未経験牛(VA投与区) 36.54 37.29 37.47 37.44 39.30 38.58 37.62 35.13 37.42
中毒未経験牛(対照区) 13.08 11.82 12.00 12.66 12.39 12.06 11.58 11.97 12.20
中毒経験牛(VA投与区) 21.93 22.10 26.85 28.83 25.20 23.04 21.00 21.66 23.83
中毒経験牛(対照区) 17.97 18.72 20.25 20.55 18.72 18.63 18.57 19.53 19.12

表1 中毒未経験牛の血漿中ビタミンA濃度の推移


表2 硝酸塩中毒試験フローチャート

[その他]
研究課題名:物質循環型酪農経営確立のための飼養管理技術の開発、
予算区分 :交付金
研究期間 :2000〜2001年度

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