ビタミンA制限が増体および産肉性に及ぼす影響
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[要約]
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黒毛和種を27ヶ月齢で出荷する肥育体系において、生後10〜21ヶ月齢までの期間血中ビタミンA(以下VA)を40IU/dl程度にコントロールすると、胸最長筋における粗脂肪含量が向上する傾向が見られた。22ヶ月齢以降VAを給与し、血中VA濃度を120IU/dl程度に維持すると増体が向上した。
- [キーワード]
- ビタミンA、黒毛和種
- [担当]
- 鹿児島畜試・肉用牛部
[連絡先]0995-48-2185
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(肉用牛)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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VAコントロールによる肥育に関する調査は各試験場等において種々行われており,肥育中期の低VA状態が脂肪交雑の向上に効果があるとの結果が報告されている。今回,より精度の高い実証を目的に,黒毛和種ET産子全兄弟牛2組と分割胚双子牛1組の計6頭(雌4頭,去勢2頭)を用いて,27ヶ月齢で出荷する肥育体系においてVAを生後10〜21ヶ月齢までの期間無添加、22〜27ヶ月齢の期間日本飼養標準VA要求量の50%を添加した試験区と、10〜27ヶ月齢の期間日本飼養標準VA要求量の50%を添加した対照区で肥育試験を実施した。なお、濃厚飼料はVA含量の低いものを、VA製剤は50万IU/kgのものを用いた。
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[成果の内容・特徴]
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試験区の血中VA濃度は、試験開始から12週で急激な減少傾向を示し24週で50IU/dl以下となった。なお、血中VA濃度低下時に、日本飼養標準要求量の50%量のVA製剤2週間添加を2ヶ月間隔で3回程度実施することで血中VA濃度40IU/dl程度を維持した。(図1)
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乾物摂取量は、試験開始後20〜52週にかけて試験区が対照区より低く推移し、52週以降は試験区が対照区より高く推移した。(図2)
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試験区の増体については、中期に低下したが、後期に回復し、と畜時の体重は対照区と差が見られなかった。(表1)
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試験区において、増体の停滞が見られた時期の血中VA濃度と乾物摂取量について検討した結果、有意な相関が見られた。(図3)
- 胸最長筋面積は試験区50.7±0.6cm2、対照区47.0±4.6cm2,脂肪交雑(BMS)は試験区8.0±1.0、対照区5.3±2.5となったが有意な差はなかった。また、肉色(BCS)、光沢、きめ、締まりなどの肉質においても有意な差はなかった。(表2)
- 胸最長筋の組成については,試験区が粗脂肪含量が多く,水分含量が少ない傾向が見られた(P<0.1)。(表1)
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以上のことから、生後10〜21ヶ月齢までの期間VAを制限し血中VA濃度を40IU/dl程度にコントロールすると胸最長筋における粗脂肪含量が向上する傾向が見られた。また、22ヶ月齢からVAを添加し、肥育後期に血中VA濃度を120IU/dl程度に維持すると増体が向上した。
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[成果の活用面・留意点]
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肥育期におけるVAコントロール設定の参考にできる。
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[具体的データ]
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図1 血中VA濃度の推移

図2 乾物摂取量(4週間隔)

図3 血中VA濃度と乾物摂取量の相関

表1 増体成績

表2 枝肉成績および胸最長筋組織
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[その他]
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研究課題名:バイオ双子を用いた低コスト肉用牛肥育試験.試験1ビタミンA制限による肥育技術の確立
予算区分 :国庫1/2
研究期間 :1997〜2003年度
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