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九州低標高地におけるシバ(Zoysiajaponica)草地の牧養力


[要約]
九州低標高地の無施肥条件下のシバ草地においては、5月上旬から11月上旬まで1haあたり肉用繁殖牛では3頭、肉用育成牛では4頭の放牧が可能である。育成牛放牧時には濃厚飼料を体重比1%程度給与すると0.7kg/dayの増体が得られる。

[キーワード]
イネ科牧草、肉用牛、生態、九州低標高地、シバ草地、放牧

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・草地管理利用研究室

 [連絡先]096-242-7757
 [区分]畜産草地・(永年草地・放牧)、九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)
 [分類]技術・参考
 

[背景・ねらい]
シバ(Zoysiajaponica)草地は無施肥でも長期間にわたって利用することが可能であり、耕作放棄地等を中心に低投入持続型草地として各地で造成する事例が増えてきている。しかしながら、温暖な九州低標高地での試験研究は少なく収量や牧養力等が把握されていない状況である。そこで、九州低標高地に造成した無施肥条件下のシバ草地においてシバの乾物収量および栄養価ならびに肉用牛の放牧期間、放牧頭数およびその時の増体を調査することでシバ草地の牧養力を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 九州低標高地における無施肥条件下のシバ草地に、5月上旬から11月上旬まで放牧した時、造成3年目から9年間にわたって450〜600kg/10aの乾物生産量が安定的に得られる(図1)。その利用率は70%前後で推移し乾物として300〜500kg/10aの草を放牧牛に供給できる(図1)。

  2. 無施肥条件下のシバの粗蛋白質およびTDN含有率は春高く、夏から秋にかけて低い傾向を示し、粗蛋白質は7〜10%、TDN含有率は42〜50%の範囲内にあるので、繁殖牛には適しているが、育成牛には補助飼料を給与する必要がある(表1)。

  3. 繁殖牛を放牧する際には、800頭・日/ha/年放牧すると牛の体重が減少する場合があるので、600頭・日/ha/年程度が適切である(図2)。

  4. 育成牛を放牧する際には、補助飼料として濃厚飼料(TDN含有率70%)を体重比で1%程度給与すると、0.7kg/day程度の増体が得られる。その際の放牧頭数は800頭・日/ha/年程度が適切である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 九州低標高地のシバ草地に肉用牛を放牧利用するときに活用できる。

  2. 分娩末期の妊娠牛の栄養要求量は高いので、分娩末期以外の繁殖牛に適用できる。

  3. 試験地はほぼ正方形の水平な地形であるため放牧によるエネルギー損失は比較的小さく、傾斜地等では牧養力はやや低下する。

[具体的データ]

図1 シバ草地の乾物生産量の年次推移


図2 繁殖牛の延べ放牧頭数と体重の増減


表1 シバの月別成分値(%DM)


表2 育成牛の採食量、増体量および延べ放牧頭数

[その他]
研究課題名:草地の動態(1)シバ型草地の生産力
予算区分 :交付金(草地動態)
研究期間 :1992〜2001年度

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