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卵巣採材から成熟培養開始時までの未成熟卵子の処理法


[要約]
BSE検査終了までの待機時間を利用して食肉処理場内で卵子を処理することにより、卵巣採材から成熟培養開始時までの時間を短縮できる。また、卵子の輸送にHepes緩衝TCM199を用いることで、従来と変わらない体細胞クローン胚の発生成績が得られる。

[キーワード]>
BSE検査、卵子、Hepes緩衝TCM199、体細胞クローン胚

[担当]
長崎畜試・酪農科

 [連絡先]0957-68-1135
 [区分]畜産・草地(動物バイテク)
 [分類]科学・参考
  

[背景・ねらい]
クローンや体外受精技術に用いるための未成熟卵子の吸引採取は、屠殺後できるだけ短時間(少なくとも5時間以内)に行うこととされている。しかし、国内での牛海綿状脳症(BSE)の発生により、食肉処理場ではBSE全頭検査が始まり、検査が終了するまでは内臓等の場外持ち出しが禁止となった。したがって、卵巣の採材後、検査終了時まで処理場内で待機し、その後、実験室まで卵巣を輸送した場合、採材後の時間の経過とともに卵子の成熟率が低下し、ひいてはクローン胚の発生率も低下することが予想される。このため、卵巣採材後、検査終了までの待機時間を利用して処理場内で卵子を吸引・選別し、これを保温しながら実験室まで輸送した場合の輸送用培地について検討するとともに体細胞クローン胚の発生成績についても従来の方法と比較検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. BSE検査終了までの待機時間を利用して処理場内で卵子を処理することにより、卵巣採材から成熟培養を開始するまでの時間を短縮することができる(図1)。

  2. 卵子の輸送用培地としては、20%CS加Hepes緩衝TCM199が10%CS加TCM199と比較して輸送前後のpHの変動も少なく、卵子の成熟率も高い傾向にある(表1)。

  3. BSE検査実施前の4〜9月までとBSE全頭検査実施後の10〜12月までの体細胞クローン胚の発生成績を比較すると分割率、胚盤胞発生率ともに差はない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. クローン技術や体外受精技術など食肉処理場由来の牛卵巣を必要とする技術に活用できる。

  2. 卵子の処理に当たっては、食肉衛生検査所等の施設を活用することになるため、従来にも増して各関係機関との緊密な連携体制を構築する必要がある。

[具体的データ]

図1 卵巣採材から成熟培養を開始するまでの過程


表1 輸送用培地による成熟率の比較


表2 体細胞クローン胚の体外発生と移植成績(2001年度)

[その他]
研究課題名:核移植によるクローン牛作出技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :1994〜2003年度

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