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豚における飼料中のリジンあるいはトレオニンの不足による血中IGF-I濃度の低下


[要約]
飼料中の必須アミノ酸であるリジンあるいはトレオニン濃度を低下させると、インスリン様成長因子-I(IGF-I)とIGF結合蛋白質3(IGFBP3)の血中濃度は低下するが、肝臓におけるIGF-IのmRNA発現量は変化しない。

[キーワード]
リジン、トレオニン、IGF-I、IGFBP3、家畜生理・栄養、豚

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作部・産肉制御研究室

 [連絡先]096-242-7749
 [区分]九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜)、畜産草地
 [分類]科学・参考
 

[背景・ねらい]
IGF-Iは家畜における主要な成長因子であるが、豚においては、その血中濃度に及ぼす飼料中の必須アミノ酸濃度の影響は不明であった。そこで、単一の必須アミノ酸が不足する飼料を豚に給与し、IGF-Iの血中濃度に及ぼす影響を明らかにするとともに、その制御機構について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 豚における第1制限アミノ酸であるリジンの飼料中含量が、要求量を満たしていない飼料(リジン濃度0.70%)を6週齢の雄子豚に3週間給与すると、要求量を満たした飼料(同1.15%)を給与した豚に比較して、増体量、飼料効率およびIGF-Iの血中濃度が低下する(表1)。また、IGF-Iと結合して血液中での半減期を長くし、結果的にIGF-Iの生理活性を増強する方向に作用するIGFBP3の血液中濃度も低くなる(図1)。

  2. 同様に、トレオニンの飼料中含量が要求量を満たしていない飼料(トレオニン含量0.51%)を、6週齢の雄子豚に3週間給与すると、要求量を満たした飼料(同0.84%)を給与した豚に比較して、増体量、飼料効率およびIGF-IとIGFBP3の血中濃度が低下する(表1図1)。

  3. 上述したいずれの条件でも、IGF-Iの主要な産生組織である肝臓におけるIGF-IのmRNAの発現量に差は認められない(図1)。
  4. 以上の成績は、必須アミノ酸であるリジンあるいはトレオニンが不足する飼料を豚に給与すると、IGF-Iの血中濃度は低下するが、主要産生組織である肝臓における遺伝子発現の低下よりむしろ、IGFBPのプロファイルの変化による、血中からの消失速度の増大が関与している可能性を示唆している。

[成果の活用面・留意点]
アミノ酸の栄養状態とIGFの関連性について研究する際の基礎資料とする。また、リジンとトレオニン以外の必須アミノ酸については、別途検討する必要がある。

[具体的データ]

表1 飼養成績とIGF-Iの血中濃度


図1 IGFBP3の血中レベルと肝臓のIGF-ImRNA量

[その他]
研究課題名:筋肉へのエネルギー蓄積を調節する遺伝子群の発現調節機構の解明
予算区分 :形態・生理
研究期間 :1998〜2000年度

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