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アマニ油脂肪酸カルシウムによる肥育牛からのメタン発生抑制


[要約]
肥育牛の配合飼料にアマニ油由来の脂肪酸カルシウムを4%添加することにより、メタン発生量を乾物摂取量あたりで3〜5%、増体あたりで14%程度削減することができる。また、増体、枝肉歩留、ロース中脂肪含量、共役リノール酸割合が増加する。

[キーワード]
家畜生理・栄養、肉用牛、メタン発生、アマニ油脂肪酸カルシウム、増体

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・栄養生理研究室

 [連絡先]096-242-7747
 [区分]九州沖縄農業・畜産・草地(肉用牛)
 [分類]行政・参考
  

[背景・ねらい]
京都議定書により削減が必要となっている地球温暖化ガスの一つであるメタンの、畜産分野からの発生量を抑制するためには、飼養頭数の増加が見込まれる肉用牛からの発生抑制が重要である。メタンの発生抑制には飼料中への不飽和脂肪酸の添加が有効であることが、緬山羊と泌乳牛で報告されている。しかし、肥育牛に関しての報告はなく、肥育期間中の脂肪酸給与によるメタン発生量抑制効果と、その効果の持続性は明らかにされていない。そこで10ヶ月齢の褐毛和腫去勢肥育牛を用いて、給与区には14ヶ月齢から24ヶ月齢の屠畜まで、不飽和脂肪酸の割合が高いアマニ油を原料とした脂肪酸カルシウムを配合飼料中に4%添加して、メタン発生と生産物に対する影響を調査し、生産性を維持したままメタン発生を抑制する肉用牛飼養技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 脂肪酸カルシウム給与により、有意ではないものの乾物摂取量あたりのメタン発生量は試験期間を通じて対照区よりも低い傾向となり(図1)、給与開始1ヶ月後では対照区41.6L/kgに対して給与区39.5L/kgと約5%、給与開始9ヶ月後では対照区41.0L/kgに対して給与区39.9L/kgと約3%低い値となる。

  2. 増体1kgあたりのメタン発生量は給与区が約14%少なくなる(表1)。

  3. 脂肪酸カルシウム給与により、日増体量が優れ、飼料効率も高くなる(表1)。

  4. 給与区の枝肉歩留は対照区より大きい傾向があり、ロース中の脂肪含量も高くなる(表1)。

  5. がん予防効果を持つとされる共役リノール酸(CLA)のロース中性脂肪および皮下脂肪中の割合が給与区で高く、また、ロースリン脂質中のn3高度不飽和脂肪酸(PUFA)割合は給与区で有意に高く、栄養学的に好ましい脂肪酸組成となる(表1)。

  6. 本試験における飼料費と枝肉重量の差から計算すると、枝肉単価が1300円/kg程度であれば脂肪酸カルシウム添加はコスト的にも見合うものである(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 肉用牛からのメタン産生を抑制するための、行政施策の手法として用いることができる。

  2. 脂肪酸カルシウムの原料油脂の種類や給与割合の検討によって、さらに効果的な給与方法の開発が期待できる。

[具体的データ]

図1 乾物摂取量あたりのメタン発生量の推移


表1 脂肪酸カルシウム投与が増体および生産物に及ぼす影響


表2 本試験におけるコスト計算

[その他]
研究課題名:脂肪酸カルシウムの投与による肥育牛のメタン発生抑制
予算区分 :行政対応特研(メタン産生抑制)
研究期間 :1999〜2001年度

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