Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成13年度目次

カンキツ新品種「肥の豊」


[要約]
カンキツ新品種「肥の豊」は、「不知火」を種子親に「マーコット」を花粉親に交配して育成した珠心胚実生変異である。果実の形状は「不知火」と大きく変わらないが、樹勢が強く、減酸が早い。

[キーワード]
カンキツ新品種、「肥の豊」、「不知火」、珠心胚実生変異、樹勢、減酸が早い

[担当]
熊本農研セ・果樹研・常緑果樹部

 [連絡先]0964-32-1723
 [区分]九州沖縄農業・果樹
 [分類]技術・普及
 

[背景・ねらい]
熊本県のカンキツ経営の柱である「不知火」は、高級果実としてブランド化されているが、樹勢が低下しやすく収量が少ないこと、成熟が遅れ、高酸果実の割合が高いことが問題となっている。このため、珠心胚実生変異による育種法を活用し樹勢が強く栽培しやすい、減酸が早く、早熟性で食味の良い品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
  1. 1989年に「不知火」に「マーコット」を交配して珠心胚実生149個体を育成した。1991年から1998年にかけ高接ぎ誘引下垂法による果実品質および葉・枝の形態調査を実施し、優良個体の「肥の豊」を選抜した。

  2. 本品種は、「不知火」に比べ、葉が大きく、強いトゲを有する。新梢は伸長良好なため、樹勢が強く、樹冠の拡大が早い(表1)。

  3. 果実の大きさは270〜300gで「不知火」と同程度、果こう部にカラーを有する果実の割合がやや高い。着色は不知火と同時期かやや早い、果面はやや滑らかである(表2写真1)。

  4. 果汁成分は、12月下旬収穫、貯蔵後1月中旬の分析で糖度12.5〜14.0、酸1.2〜1.4%となり、「不知火」に比べ糖度は同程度かやや低く、クエン酸含量が0.2%程度少ない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 「肥の豊」は、2000年3月に品種登録を申請し、同年10月に品種登録出願が公表された。

  2. 普及対象地域は、「不知火」の栽培地域とし、樹勢低下園の改植用品種として適する。

  3. 原木については、ウイルス検定の結果CTV、CTLV、SDVについて無毒であり、ウイルス予防のため繁殖過程においては、高接ぎ樹からの穂木採取を行わない。

  4. 栽培管理方法については、不知火の栽培方法に準じて行い、若木のうちはトゲが発生するので除去を行う。

[具体的データ]

写真1 「肥の豊」の着果状況


表1 「肥の豊」の樹の生育と枝葉形態


表2 「肥の豊」の果実形態


表3 「肥の豊」の果汁成分

[その他]
研究課題名:カンキツ優良品種の開発
予算区分 :県単
研究期間 :1989〜1999年(1971〜2001年度)

目次へ戻る