日本ナシの鋼管パイプ棚と棚下ネット設置による台風被害軽減技術
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[要約]
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日本ナシにおいて、鋼管パイプ棚は従来の鋼線棚より台風による棚の振幅が小さく、落果が少ない。また、台風襲来前にネットを棚のすぐ下に弛みをつけずに張ることにより、落下果実の打ち傷が防止または軽減できる。
- [キーワード]
- 日本ナシ、台風、棚、鋼管パイプ、ネット、落果
- [担当]
- 熊本農研セ果樹研・落葉果樹部
[連絡先]0964-32-1723
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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「新高」等の晩生ナシは、収穫期が10月以降のため台風の襲来を受けやすく、傷果や落果により商品果率が低下したり、収量が大きく減少することが多い。そこで、棚の振動を抑えて落果を軽減するための鋼管パイプ棚の構造を検討するとともに、落下時の打ち傷を防止または軽減するため、棚下にネットを張ったときの落下果実の商品性について検討する。
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[成果の内容・特徴]
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台風襲来時の棚の振幅は、従来の鋼線棚より、鋼管パイプ棚が小さい。また、上下振動は、いずれも下への振幅が上への振幅より大きい(表1)。
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鋼管パイプ棚の構造は、支柱間隔が狭く、棚の鋼管パイプの直径が大きいほど強度が強く、強風時の棚振動の軽減に有効である(表1、表2)。
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鋼管パイプ棚は、従来の鋼線棚より落果率が低い(表3)。
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棚下へのネット設置は、落下によりネット上で果実同士の接触はあるものの、打ち傷の発生防止または軽減には有効である(表4)。
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[成果の活用面・留意点]
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鋼管パイプ棚は従来の鋼線棚に比べ、強風時の果実落下軽減に効果がある。
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鋼管パイプ棚は誰にでも簡単に張れるし、一部改植等による取り外しも自由にできる。
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支柱間隔が狭いほど強風時の棚振動軽減には効果があるが、スピードスプレーヤ等の機械類を通すためには最低3mの作業道が必要である。
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ネット上での果実同士のぶつかり合いによる打ち傷を防止するためには、ネットは棚下のなるべく近い所に弛みをつけず張る。
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[具体的データ]
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表1 平棚の構造の違いが台風時の棚振動に及ぼす影響

表2 鋼管パイプ棚の支柱間隔と強度との関係

表3 「新高」における鋼管パイプ棚と鋼線棚の落果率

表4 「新高」成熟果a)の落下に対する棚下ネット設置によるうち傷軽減効果

図1 鋼管パイプ棚の構造
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[その他]
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研究課題名:西南暖地の特性を活かした晩生ナシの超高収益栽培技術の開発
予算区分 :助成試験(地域重要新技術)
研究期間 :1998〜2001年度
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