生食用パインアップルの新品種「サマーゴールド」、「ゆがふ」
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[要約]
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「サマーゴールド」は葉にとげがなく栽培容易で、酸が低く春から秋期にかけて食味に優れ、収穫期間の拡大が期待できる。「ゆがふ」も葉にとげがなく栽培容易で、春から夏期にかけて食味に優れ、草姿は斜立し、密植栽培が可能で、かつ果実が大きく収量の増大が期待できる。
- [キーワード]
- パインアップル、生食用、新品種、果実品質、「サマーゴールド」、「ゆがふ」
- [担当]
- 沖縄農試・名護支場・果樹育種研究室
[連絡先]0980-52-0052
[区分]九州沖縄農業・果樹
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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近年、沖縄県の生食用パインアップルの生産は伸びてきているが、現在栽培されている品種は栽培性、収量性および品質の面で問題がある。それらの欠点を改良し、生食用優良果実の周年供給体制を目指していくためには、春から冬期の各作型において高品質かつ栽培容易な優良品種の育成を進める必要がある。そのため、1989年より農林水産省パインアップル育種指定試験地として交雑育種を実施している。
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[成果の内容・特徴]
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「サマーゴールド」
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葉にとげがなく栽培容易で、従来の生食用品種「ボゴール」、「ソフトタッチ」よりも果実が大きい(表1)。
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果形は円筒で、果皮は黄色、果肉は淡黄色である(写真1)。
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自然夏実は、糖度はそれほど高くないが、酸度が低いため、糖酸比は高く食味に優れている(目標糖酸比:18以上)。えい芽の発生数は適正だが、吸芽は若干多い(適正発生数、えい芽:2から5本、吸芽:1から2本)(表1)。
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処理春実は、高糖低酸で糖酸比が高く、食味に優れている。えい芽の発生数は適正であるが、吸芽の発生数は若干多い(表1)。
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自然秋実は、自然夏実、処理春実に比べるとやや酸度が高いため、糖酸比は若干低いが、食味に優れている(表1)。
「ゆがふ」
- 葉にとげがなく栽培容易で、草姿は斜立し、密植栽培が可能である(表1)。
- 従来の生食用品種「ボゴール」、「ソフトタッチ」よりも果実が大きい(表1)。
- 果形は円錐で、果皮は黄色、果肉は白色である(写真2)。
- 自然夏実は、甘く酸味もあってさわやかさがあり、食味に優れている。えい芽、吸芽とも発生数は適正である(表1)。
- 処理春実は、酸度はやや高いが糖酸比は18以上あり、生食可能である(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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両品種は温暖な酸性土壌地帯に適し、「サマーゴールド」は露地栽培でも春から秋期に、「ゆがふ」は春から夏期に出荷可能で、出荷期間が拡大され、労力の分散と軽減化および収入の平準化が見込まれる。
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「サマーゴールド」は夏実、春実で吸芽の発生が多いので、次期着果に必要な1本だけを残し、残りは早めに除去し、果実の肥大を促進するようにする。除去した吸芽は植え付け種苗に用いる。
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植え付け種苗には一般的に、えい芽を用いるが、両品種ともえい芽は小さいので、植え付け種苗として適正な大きさにして用いる。
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[具体的データ]
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表1 「サマーゴールド」、「ゆがふ」の特性

写真1 「サマーゴールド」

写真2 「ゆがふ」
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[その他]
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研究課題名:パインアップル育種試験、第2回パインアップル系統適応性検定試験
予算区分 :国庫(指定試験)
研究期間 :1989〜2001年度
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