カンキツ「天草」における自根発生樹の識別法
-
[要約]
-
新根を供試した遺伝子診断技術のひとつであるRAPD分析によりカンキツ「天草」の自根と台木根を高い確率で比較的容易に区別することができる。また、ひこばえを発生させる方法でも簡易的に自根発生樹を識別することができる。
- [キーワード]
- 天草、自根、簡易識別、RAPD分析、ひこばえ、新根(細根)
- [担当]
- 宮崎総農試・果樹特産部・常緑果樹科、生物工学部
[連絡先]0985-73-7099
[区分]九州農業・果樹
[分類]技術・参考
-
[背景・ねらい]
-
苗木で栽植した「天草」では、栽植の方法によって自根の発生が明らかになってきた。定植後2〜3年程度であれば自根と台木根(カラタチ)の区別は容易であるが、年数が経過するにしたがい自根の急激な成長により区別しにくくなる。また、自根の発生した樹は樹勢が旺盛になり果実品質に及ぼす影響も大きい。そこで、自根発生樹を識別できる方法について検討した。
-
[成果の内容・特徴]
-
- 根幹周辺の表層から新根(細根)を採取しISOPLANT法によりDNAを抽出した後、プライマ-CMNA00、PCR条件95度2分、[94度2分、35度2分、72度3分]45サイクル、72度7分でRAPD分析を行うことで、その多型(DNA配列の差異)から自根の発生を確実に識別することができる(図1)。
-
本手法による識別法は、全体の9割程度の高い確率で自根と台木根(カラタチ)を識別することができる(表1)。
-
ひこばえを多く発生させるためには、処理する根の太さとの関係が重要で、直径10mm程度の中根から大根を切断し、ある程度の長さ(5〜10cm)を保ちながら地上部に露出させることが必要である(表2)。
-
ひこばえを利用する簡易識別法では、処理からひこばえ発生まで時間を要することから根が長期間生存することが必要で、そのためには発芽期以降の処理が望ましい(表3)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
自根の発生を比較的容易に識別することで、自根発生樹の品質向上対策を集中的に行うことができ「天草」の高位平準化が図られる。
-
ひこばえを利用した簡易識別法は、ひこばえの発生割合がやや低い傾向にあり、識別の精度がやや落ちる。
-
本試験成績は、施設栽培されたカラタチ台「天草」での結果である。
-
[具体的データ]
-

図1 RAPD分析による「天草」根の多型

表1 RAPD分析による「天草」根の識別

表2 ひこばえの発生と処理した根との関係

表3 簡易識別法によるひこばえの発生
-
[その他]
-
研究課題名:地域特産カンキツの高品質安定生産に適した施設利用技術の開発
予算区分 :助成試験(地域実用化)
研究期間 :1999〜2003
目次へ戻る