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気温データを用いたスクミリンゴガイの水田での越冬期間の死亡率推定


[要約]
冬期(12月〜2月)の平均気温と、春期の水田におけるスクミリンゴガイの死亡率(角変換値)との間に、y=‐12.4x+120の関係が認められる。この関係式から、冬期の平均気温を用いて、水田内でのスクミリンゴガイの死亡率の推定が可能である。

[キーワード]
スクミリンゴガイ、死亡率、平均気温、越冬、水稲

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・病害虫農薬研究室

 [連絡先]0952-45-2141
 [区分]九州沖縄農業・病害虫
 [分類]技術・普及

[背景・ねらい]
スクミリンゴガイの水田内での越冬期間の死亡率(以下、死亡率)を推定することは貝の防除対策を考えるうえで極めて重要であるが、貝の越冬調査には多大な労力が必要となる。本種の水田での越冬には冬期の低温が大きな死亡要因になっているため、冬期の温度データから貝の死亡率が推定できれば、その利用価値は非常に高い(貝の死亡率の年次変動を対象とした解析はこれまで全く行われていない)。そこで、室内実験および7年間にわたる水田内での越冬調査を行い、低温条件と貝死亡との関係を調べた。

[成果の内容・特徴]
  1. 7年間、水田内でのスクミリンゴガイの越冬調査を、毎年貝の調査対象サイズと調査場所を同じ条件にして行った結果、死亡率の年次変動が大きく1995〜2001年の値は18.1〜66.7%となった(図1)。

  2. 室内実験の結果、スクミリンゴガイを保持した温度が低いほど貝の死亡率が高い傾向がみられた(図2)。このことから、各年次における冬期(12月〜2月)の平均気温と春期のスクミリンゴガイの水田での死亡率との関係を調べた結果、平均気温が低い年ほど死亡率(角変換値,図3参照)が高い明確な傾向がみられ、y=‐12.4x+120の関係が得られた(図1)。

  3. 以上のことから、冬期の平均気温を用いて、水田内でのスクミリンゴガイの死亡率の推定が可能である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 西南暖地のスクミリンゴガイ発生地帯の水田における死亡率の推定に活用できる。

  2. y=‐12.4x+120の式は、水田内の藁下から採集した殻高6mm以上の貝についての関係式である。藁がない場合の死亡率はこれより高い。また、貝の死亡率は、貝の殻高や採集場所、圃場条件などによって異なるため、各地域の死亡率のおおまかな推定を行う場合は(平年より高いか低いか)、冬期の平均気温(12月〜2月)を平年値と比較する。

[具体的データ]

図1 各年次の冬期(12〜2月)の平均気温と春期の水田内でのスクミリンゴガイの死亡率との関係


図2 室内実験におけるスクミリンゴガイの保持温度と死亡率との関係


図3 死亡率の角変換値と%データとの関係

[その他]
研究課題名:冬期の気温とスクミリンゴガイの水田内における越冬状況の関係
予算区分 :国庫補助(総合的病害虫管理推進事業)
研究期間 :1998〜2000年度

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