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立木と集合フェロモンを利用した果樹カメムシ類の効率的天敵微生物接種法


[要約]
チャバネアオカメムシ集合フェロモン剤と昆虫病原性糸状菌を培養した不織布を立木に施用すると果樹カメムシ類に効率的に天敵微生物を感染させることができる(以下この装置を立木感染トラップという)。立木感染トラップは野外で20日以上感染能力を保持する。

[キーワード]
チャバネアオカメムシ、集合フェロモン、糸状菌、防除

[担当]
福岡農総試・病害虫部・果樹病害虫研究室

 [連絡先]092-924-2938
 [区分]九州沖縄農業、共通基盤、果樹・病害虫
 [分類]技術・参考

[背景・ねらい]
チャバネアオカメムシの集合フェロモン剤は同種の雌雄成虫のみならず、同じ果樹加害性カメムシ類であるツヤアオカメムシ、クサギカメムシも誘引する。一方、チャバネアオカメムシから分離された昆虫病原性糸状菌の1種Beauveria bassiana E-9102株はツヤアオカメムシ、クサギカメムシにも強い病原性を持っている。両者を用いた果樹カメムシ類の防除法を開発するには効率的に大量のカメムシ類を感染させるトラップの開発が必要である。このトラップは広域に多数設置する必要があるため、低コストであることが求められる。また、集合フェロモンに誘引されたカメムシは誘引源の周辺だけではなく比較的広い範囲にとまるため、大きなトラップほど大量のカメムシを感染させることができる。そこで、これらの条件を満たした感染トラップを開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 立木感染トラップは、立木に昆虫病原性糸状菌の1種Beauveria bassiana E-9102株を培養した不織布(5cm×50cm:市販の天敵微生物殺虫剤バイオリサ・カミキリと同じ素材)とチャバネアオカメムシ集合フェロモン剤を施用したものである(図1)。

  2. 6月上旬に設置した立木感染トラップの効果は20日後までほとんど低下せず、設置日数の経過とともに感染力が直線的に低下する市販の昆虫誘引器(コガネコール)を利用した感染トラップ(図1)より優れる(図2)。

  3. 立木感染トラップは自然木等を利用するためトラップ本体のコストは不要である。

  4. 菌を培養した不織布5本を施用した高さ2〜3mの立木感染トラップでは、飛来したチャバネアオカメムシの約50〜70%が、不織布20本を施用した高さ4〜5mの立木感染トラップでは60〜80%が感染致死した(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 立木感染トラップは低コストな感染トラップとして、菌の広域施用試験に活用できる。

  2. 集合フェロモンに誘引されたカメムシの被害を避けるため、立木感染トラップは果樹園から100m以上離した方がよい。

[具体的データ]

図1 立木感染トラップ(左)と市販の昆虫誘引器(コガネコール)トラップ(右)


図2 トラップの種類と苗培養不織布の病原性維持期間


図3 立木感染トラップでのチャバネアオカメムシの感染率

[その他]
研究課題名:集合フェロモン合成製剤を利用した防除技術の確立
予算区分 :国庫(指定試験)
研究期間 :1999〜2000年度

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