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イチゴのナミハダニ中〜多発時にチリカブリダニと組み合わせて使用できる選択的殺ダニ剤


[要約]
ナミハダニの中〜多発生時(数頭以上/1複葉)にチリカブリダニを用いる場合は、酸化フェンブタスズ、ヘキシチアゾクス、エトキサゾ−ルを散布し、その翌日にチリカブリダニの放飼を行うと、ナミハダニ低密度時のチリカブリダニ放飼と同様に高い防除効果が得られる。

[キーワード]
イチゴ、ナミハダニ、チリカブリダニ、選択的殺ダニ剤

[担当]
佐賀農業セ・土壌環境部・病害虫農薬研究室

 [連絡先]0952-45-2141
 [区分]九州沖縄農業・病害虫
 [分類]技術・参考

[背景・ねらい]
チリカブリダニを用いてナミハダニを防除する場合、ハダニの早期発見が遅れ、防除が失敗することが多い。よって、ナミハダニが中〜多発生の場合(数頭以上/1複葉)、殺ダニ剤でハダニの密度を下げてチリカブリダニを放飼する必要があるが、この防除体系は十分に検討されていない。そこで、チリカブリダニに影響が少ないと考えられている殺ダニ剤(以下、選択的殺ダニ剤)を散布した翌日にチリカブリダニを放飼する体系を組み、その防除効果の速効性および持続性を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 12月2日を有効積算温度の起算日とした場合、ナミハダニの第1、第2、第3世代の出現日はそれぞれ12月3日〜12月28日、12月29日〜1月23日、1月24日〜2月17日となった(図1)。選択的殺ダニ剤単用区では、ハダニの初期発生を無処理区に比べて抑制した。しかし、酸化フェンブタスズおよびヘキシチアゾクス単用区では第2世代、エトキサゾ−ル単用区では第3世代の発生を抑制できなかった(図1)。

  2. チリカブリダニを放飼した各試験区ではチリカブリダニの定着がみられた(図2)。しかし、チリカブリダニ単用区での防除効果は遅効的であり、第3世代の発生は抑制したが第1〜2世代の抑制効果は不十分であった(図1)。3種の選択的殺ダニ剤を散布後にチリカブリダニを放飼した区では、第1世代の発生をそれぞれの殺ダニ剤単用区と同程度に抑制し、しかも第2〜3世代の発生をチリカブリダニ単用区と同程度に抑制した(図1)。

  3. 以上のことから、上記3種の選択的殺ダニ剤を散布した翌日にチリカブリダニを放飼する体系は、速効的な効果が得られ、しかもチリカブリダニが定着することで長期間の効果が期待できる。

[成果の活用面・留意点]
  1. ナミハダニが中〜多発生の条件で酸化フェンブタスズ、ヘキシチアゾクスを散布しても、ハダニの密度がすみやかに回復することが多いので、両剤を散布した場合はできるだけ早く(1〜2日)チリカブリダニを放飼する。

  2. ハダニが少発生(1頭以下/1複葉)の場合には、選択的殺ダニ剤を散布してチリカブリダニを放飼すると、チリカブリダニがハダニを食い尽くして自滅する恐れがあるので、チリカブリダニだけを放飼する。

[具体的データ]

表1 試験区の処理方法


図1 各試験でのナミハダニの世代別平均密度


図2 チリ放飼区におけるチリカブリダニの推移

[その他]
研究課題名:天敵を用いたイチゴ害虫の総合防除体系の確立
予算区分 :国庫補助(総合的病害虫管理推進事業)
研究期間 :2001〜2003年度

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