ベンズイミダゾール系薬剤耐性ダイズ紫斑病菌の大分県での初確認
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[要約]
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ベンズイミダゾール系薬剤に対して耐性を示すダイズ紫斑病菌が大分県内で初めて確認された。耐性菌の発生には地域間差異、圃場間差異が認められる。分離154菌株はチオファネートメチル剤に対し2峰型の感受性頻度分布を示す。
- [キーワード]
- ベンズイミダゾール系薬剤、耐性菌、ダイズ紫斑病菌、2峰型
- [担当]
- 大分農技セ・植物防疫部
[連絡先]0978-37-1141
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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大分県における2000年産ダイズは紫斑病が多発生し、品質に大きな影響を及ぼした。その原因の一つとして薬剤耐性菌の発生が考えられた。現在紫斑病を対象とした防除薬剤は、他作物で耐性菌の発生により防除効果の低下が指摘されているチオファネートメチル剤が主体である。そこで、2000年産ダイズにおける紫斑病の多発生を契機に、ベンズイミダゾール系薬剤に対する薬剤感受性の検定を行う。
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[成果の内容・特徴]
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大分県内調査25圃場のうち20圃場で紫斑病粒の発生が認められ、発病粒率は0.2〜19.0%と圃場間差異および地域間差異が認められる(表1)。
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大分県内20圃場のダイズ紫斑病粒から分離された154菌株のうち、37.0%の菌株がベンズイミダゾール系薬剤耐性菌である(表2)。
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耐性菌の発生は地域間、圃場間で差異があり、発生が確認された圃場ではほとんどが50%以上の耐性菌率と高い傾向が認められる。また、発病の多かった圃場で耐性菌率が高い傾向が認められる(表1、表2)。
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供試154菌株のMIC値の菌株比率は800ppm以上が37.0%、6.25ppm以下が63.0%であり、2峰型の感受性頻度分布である(図1)。
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これら菌株はベンズイミダゾール系薬剤耐性菌に特異的に抗菌活性を示すジエトフェンカルブ剤に対して明確な負相関交差耐性を示す(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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ベンズイミダゾール系薬剤耐性菌が確認された圃場および地域では、防除薬剤をイミノクタジンアルベシル酸塩水和剤、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤など他系統薬剤に切り替える。
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ダイズ紫斑病は種子伝染を行うことから、採種圃場では薬剤耐性菌を発生させないためにも、系統の異なる薬剤でローテーション散布を行う。また定期的に薬剤感受性検定を実施し、薬剤耐性菌の発生推移を把握する。
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[具体的データ]
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表1 2000年産ダイズ紫斑病の地域別発病粒率

表2 チオファネートメチル水和剤に対するダイズ紫斑病菌の感受性

図1 ダイズ紫斑病菌におチオファネートメチル剤に対する感受性の頻度分布

表3 ダイズ紫斑病菌に対する最小生育阻止濃度
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[その他]
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研究課題名:水田転作大豆・麦による農地の高度利用と高生産技術
予算区分 :地域基幹
研究期間 :2000〜2001年度
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