Phomasp. によるゲットウ輪紋病(新称)の発生
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[要約]
- ゲットウ(Alpinia speciosa K.Schum)の葉に、はじめ褐色円形の小病斑が生じ、しだいに融合して大型病斑となり、後に、葉全体が枯死する病害が発生した。病原菌はPhoma sp.と同定された。本病をゲットウ輪紋病と命名する。
- [キーワード]
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ゲットウ(Alpinia speciosa K.Schum)、Phoma sp.、ゲットウ輪紋病
- [担当]
- 沖縄農試・病虫部・病理研究室
[連絡先]098-884-9908
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]科学・普及
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[背景・ねらい]
- 近年、沖縄県下のゲットウ(Alpinia speciosa K.Schum)栽培地域において、ゲットウの葉が褐変、枯死する病害が発生している。ゲットウは主に葉を収穫し、漢方薬等あらゆる用途に用いられていることから、本病害の発生は栽培上重要な病害で、本病の病原菌を同定し、防除対策を立てる必要がある。
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[成果の内容・特徴]
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ゲットウ葉に、はじめ褐色円形の小病斑が生じる。しだいに融合して大型病斑となり、後に、葉全体が枯死する(図1、図2)。
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枯死した病斑部には褐色で、剛毛のない柄子殻が多数認められる。
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病斑部分から、PDA培地上で表面白色、裏面褐色の菌叢を形成する糸状菌が高率に分離される。
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本菌はゲットウ葉への無傷接種では発病しないが、有傷接種で病徴が再現される。これらの病斑からは接種に用いた菌株と同一の菌が再分離される。
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本菌はPDA培地上で褐色、球形〜偏球形の柄子殻を形成し、大きさは直径75〜210μm(平均130μm)。柄胞子は、無色、単胞、楕円形で内部に1〜3個の油球を有し、大きさは6.7〜12.5×2.4〜4.8μm(平均8.7〜3.1μm)である。分離菌は3種のPhoma属菌と一致する点も多いが、柄胞子の大きさ、菌叢の色で違いが認められる(図3、図4、表1)。
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本菌は摂氏15〜35度の範囲で生育、適温は摂氏25〜30度である(図5)。
- 以上の結果から、本菌をPhoma sp.と同定し、病名をゲットウ輪紋病とする。
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[成果の活用面・留意点]
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防除技術開発の基礎資料となると共に、病害診断技術として活用できる。
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[具体的データ]
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図1 病徴

図2 葉の病徴拡大

図3 柄子殻

図4 柄胞子

表1 罹病葉から分離した菌とPhoma属菌の性状比較

図5 菌糸伸長におよぼす温度の影響
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[その他]
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研究課題名:県内で発生する各種作物の病害診断
予算区分 :県単
研究期間 :2000年度(1998〜)
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