サトイモ萎凋病菌の密度変動
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[要約]
- サトイモ萎凋病菌は非宿主を栽培している圃場で増殖することがあり、発病後10年を経過しても検出される。本病原菌は土壌消毒により強制的に密度を下げても増殖する。また、病原菌を含むF. oxysporum全体には生息許容密度がある。
- [キーワード]
- サトイモ萎凋病菌、Fusarium oxysporum、生息許容密度、密度変動
- [担当]
- 九州沖縄農研・野菜花き研究部・野菜花き保護研究チーム
[連絡先]0942-43-8271
[区分]九州沖縄農研・病害虫、共通基盤・病害虫、野菜茶業・野菜生産環境
分類]科学・普及
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[背景・ねらい]
- 体細胞和合性検定法が考案されるまでF. oxysporumの病原菌と非病原菌を簡易に区別する方法がなく、これらの生態解明は不十分であった。同法によりサトイモ萎凋病菌(F. oxysporum f. sp. colocasiae)とサトイモに対する非病原菌の区別が可能になったので、サトイモ萎凋病菌と非病原菌の密度変動を調査してこれらの生態を明らかにし、4年輪作でも発病する本病の防除法の開発に資する。
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[成果の内容・特徴]
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発病により高くなったサトイモ萎凋病菌密度は、サトイモ以外の作物を栽培している圃場において低下するが、本病原菌は非宿主を8〜10年栽培した後も検出される(図1)。
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本病原菌は密度が低い時に増殖し、高い時に低下することがあり(図2)、土壌消毒後には増殖する(図2と図3のD圃場1988〜1991年)。腐生的な増殖と厚膜胞子の耐久生存により、本病原菌は長期間圃場に定着できる。
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非病原菌密度は本病原菌と同様に変動する(図2)が、発病後年数を経ても低下しない(図1)。
- F. oxysporum全体の密度には範囲(生息許容密度)がある。生息許容密度の下限を調査結果の最低密度、上限を翌年に密度が低下しない高密度と考えた場合、黒ボク土壌の非宿主栽培圃場における生息許容密度は600〜10,000CFU/g乾土であった(図3)
- サトイモ連作圃場では、F. oxysporum密度中の本病原菌の割合は約90%と高くなり、非病原菌密度は低下する(データ略)。
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[成果の活用面・留意点]
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生息許容密度は自然発病したことのある18圃場において1986〜1998年に調査した結果から推定した。
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増殖して高密度になった後に低下する場合、その密度は許容範囲を超えているために低下すると考えた。
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生息許容密度は、その菌を圃場から排除できないこと、許容範囲以上にすれば密度が低下することを示す。
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非宿主栽培圃場における本病原菌と非病原菌の生態は同一ではないが、生息許容密度以上の非病原菌により、病原菌の増殖を抑制できる可能性がある。
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[具体的データ]
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図1 サトイモ萎凋病菌汚染圃場における発病後の年数と菌密度の関係

図2 サトイモ萎凋病菌と非病原菌の密度変動の事例

図3 サトイモ萎凋病菌汚染圃場におけるF. oxysporum密度の推移の事例
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[その他]
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研究課題名:サトイモ乾腐病の発生生態の解明と制御技術の開発,その他
予算区分 :GEP,経常
研究期間 :1985〜2001年度
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