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ブドウ苦腐病菌の遺伝的多様性と新梢枯死を引き起こす本菌菌群の簡易同定法


[要約]
rDNAITS領域の塩基配列の解析から、ブドウ苦腐病菌には少なくとも3種類の遺伝的に異なる菌群が存在する。また、本菌には分生子層の形成状況及び新梢に対する病原性が異なる菌群が存在し、これらは簡易に区別できる。

[キーワード]
ブドウ苦腐病菌、遺伝的多様性、病原性、同定、遺伝子診断

[担当]
福岡農総試・病害虫部・果樹病害虫研究室

 [連絡先]092-924-2938
 [区分]九州沖縄農業・病害虫
 [分類]科学・参考

[背景・ねらい]
近年、本県のハウス栽培のブドウ(品種:巨峰)で、苦腐病菌による新梢枯死が発生し問題となっている。本病については、主に果実に発生する病害として報告されており、新梢で多発するとの報告はない。そこで、本県の苦腐病菌と全国各地から採集した同菌の遺伝的多様性をDNAレベルで比較し、本菌の分類、同定や生態解明の基礎資料とする。

[成果の内容・特徴]
  1. ブドウ苦腐病菌には、新梢に強い病原性を示すヘテロタリックな交配型の菌群と、新梢に対する病原性が弱いホモタリックな菌群の2群が存在する(表1表2)。

  2. 両菌群は、分生胞子の形及び大きさでは区別できないが、分生子層の形成状況で簡易に区別できる(表1)。

  3. 両菌群は、菌のrDNAITS領域をPCRで増幅し、制限酵素Hae(III)もしくはMsp(I)で切断することで簡易に区別できる。なお、各地から採集したブドウ苦腐病菌のrDNAITS領域の塩基配列の解析から、本菌には少なくとも3種類の遺伝的に異なる菌群が存在する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. ブドウの新梢に対する病原性を異にする、苦腐病菌の2菌群の簡易同定法として利用できる。

  2. ブドウ苦腐病菌が属するGreeneria属菌分類の基礎資料となる。

[具体的データ]

表1 ブドウ苦腐病菌の形態的特徴、培養性状、交配型及び新梢に対する病原性


表2 各地から採集したブドウ苦腐病菌のrDNAITS領域の比較、培養性状、交配型及び新梢や果実に対する病原性

[その他]
研究課題名:ブドウ苦腐病の発生生態と防除
予算区分 :県単
研究期間 :1996〜2000年度

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