被覆尿素肥料利用による河川への窒素流出防止対策と水稲への影響
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[要約]
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水稲栽培において被覆尿素肥料のみの全量基肥施用により、移植直前の田面水中の窒素濃度が低く抑えられ、河川への窒素の流出を軽減できる。また、水稲に対しては、慣行の分施より30〜50%減肥して窒素を施用しても90%程度の収量は確保出来る。このとき玄米窒素含有率は慣行よりも低く抑えられ、食味は向上する。
- [キーワード]
- 水稲、被覆尿素、田面水、減肥、玄米窒素含有率、食味
- [担当]
- 福岡農総試・化学部・作物栄養研究室
[連絡先]092-924-2939
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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水稲栽培において、速効性肥料は施用後、水にすぐに溶解し、肥効発現が迅速であることから初期生育の確保を図る上では被覆尿素をはじめとした肥効調節型肥料よりも優れている。しかし、水溶性であるため降雨の多い時期の施肥窒素は、土壌に吸着されるまでの間、水の挙動に伴って河川へと流出するリスクが大きい。また、水稲作付期間中の河川水の窒素濃度は代かき時期に最も高い値を示すことが指摘されていることからも、施肥窒素の流出を抑制することが必要である。そこで、施用後、徐々に窒素が溶出してくる被覆尿素肥料を用いた窒素流出防止対策を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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被覆尿素肥料のみで全量基肥施用した場合、移植直前の施肥2日後において、田面水中窒素濃度は慣行(分施)の11ppmに対して4ppmで、無窒素と同水準に窒素濃度を低く抑えることができる。このことから、河川への窒素流出のリスクを軽減できる(図1)。
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被覆尿素のみで全窒素量を30〜50%減じて全量基肥施用すると、慣行の分施よりも玄米窒素含有率が低く、食味も向上する(表1)。
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収量は年次により傾向が異なる。低収年には分施と遜色ないが、高収年には概ね10%程度減収する(表2)
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[成果の活用面・留意点]
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環境保全型農業の指導用の基礎資料として活用できる。
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ヒノヒカリに対する試験の結果であるので、他品種に対しては各品種に適合する被覆尿素のタイプを選択する必要がある。
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[具体的データ]
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図1 施肥から移植までの田面水中の窒素濃度の推移(2000年筑紫野)

表1 玄米窒素含有率と食味評価

表2 収量と籾数
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[その他]
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研究課題名:地力窒素の活用による施肥量の削減技術
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2000年
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