杉バークを利用したイチゴ高設栽培の排液量削減のためのかん水技術
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[要約]
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杉バークを利用したイチゴ高設栽培において、かん水開始点を水分センサーを用いてpF1.5に設定し、株当たり80ml/回(0.5t/10a)のかん水を行うと、毎日一定量のかん水を行うかけ流し方式に比べて排液量が削減され、収量、品質が向上する。
- [キーワード]
- 杉バーク、イチゴ高設栽培、かん水方法、水分センサー、排液量
- [担当]
- 大分農技セ・化学部
[連絡先]0978-37-1141
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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イチゴ栽培では、近年、省力化のための高設栽培の導入がめざましい。杉バークを利用した栽培では、培地量が少なく保水性が小さいため、かん水により排液が発生し易く環境への影響が懸念される。そこで、排液量を削減するための培地の水分管理技術として水分センサーとタイマーを併用したかん水技術を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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杉バークの含水量(体積当たり水分量)はpF1.5前後で大きく変化することから、pF1.5をかん水開始点とする(図1)。かん水は、タイマーと水分センサーを併用し、日中は毎時かん水状態とし、水分センサーがpF1.5となり、タイマーと同時出力状態となった時に80ml/回(0.5t/10a)をかん水する。
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株当たりの収量は、かけ流し方式よりpFかん水方式の方が勝る(表1)。また、果実中の糖度やビタミンC、全窒素濃度は、pFかん水方式がかけ流し方式より高い(表2)。
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杉バーク培地のpF値は、かけ流し方式では1.0〜1.2、pFかん水方式では1.3〜1.6で推移し、かけ流し方式が多水分で推移する(データ省略)。
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かけ流し方式の1日当たりのかん水量は、12月中旬まで140ml/株、3月上旬まで210ml/株、その後280ml/株とすると、排液量はそれぞれ約100、150、180ml/株で、1作期間中の全排液率は約60%となる。pFかん水方式によるかん水量は日射量により変動するが、排液率は12%と低い(図2)。
- 排液中の硝酸態窒素濃度は約30〜100ppm、リン濃度は10〜25ppmであるが(データ省略)、10a当たりの総排出量は、かけ流し方式では窒素4.6kg、リン0.9kgに対し、pFかん水方式では窒素でその11%、リンで4%に削減できる。
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[成果の活用面・留意点]
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大分県イチゴ高設栽培に適用する。
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pFかん水方式では、気温が上昇し蒸散量が多くなる時期には、1回のかん水量を微調整する。
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水分センサーは、ハウス内の最も培地が乾燥し易い場所を選び、かん水チュブと株の中央の位置に、受感部の中央が深さ5cmになるように設置する。
- 水分センサーは、使用開始時に気密性やゼロ点の位置等の調整に十分留意する。
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[具体的データ]
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図1 杉バークの含水量とpF値

表1 かん水方法と収量および果実品質

図2 灌水方法の違いと1株当たりの灌水量および排液量

表2 かん水法と窒素及びリンの総排出量
栽培概要:
高設栽培(杉バーク、5リットル/株)
栽培期間:9月上旬〜3月
栽植密度:12.5cm千鳥植え
施肥:基肥:被覆肥料140日(20kgN/10a)+追肥(液肥5kg/10a)
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[その他]
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研究課題名:養液栽培などの新生産システムにおける環境負荷低減技術の確立、イチゴ高設栽培における低コスト排液再利用技術の確立
予算区分 :地域基幹
研究期間 :1999〜2004年年度
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