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家畜スラリー多量連用畑圃場における脱窒活性と脱窒菌群の動態


[要約]
窒素収支の明らかにされた家畜スラリー多量連用畑圃場の表層クロボク層(概ね1mまで)では脱窒活性と脱窒菌数の動態に相関が見られるが、下層(1〜4m)では無相関となる。土壌全体の脱窒活性に対する下層土の活性の寄与は5%以下と見込まれる。土壌の潜在的脱窒活性から計算した年間推定脱窒量は、窒素収支の未回収窒素分に対応する。

[キーワード]
家畜スラリー、脱窒活性、脱窒菌、下層土、窒素収支

[担当]
九州沖縄農研・環境資源研究部・土壌微生物研究室

 [連絡先]096-242-7765
 [区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
 [分類]科学・参考

[背景・ねらい]
農地への有機物や化学肥料の過剰施用による地下水系等への窒素溶脱が懸念される中、窒素過剰土壌の環境負荷低減技術の開発に向けた土壌からの脱窒活性の評価が重要であるが、作土層以下の下層土における脱窒活性の寄与や脱窒菌群の動態に関する知見は少ない。そこで、揮散を含む窒素収支が明らかにされた南九州の家畜スラリー過剰連用畑土壌(平成10年度成果情報「液状きゅう肥多量連用畑における揮散を含む窒素収支」、畑地利用部生産管理研)の表層クロボク層及び下層について脱窒活性と脱窒菌群の動態を調査し、両者の関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 家畜スラリー還元により、表層の潜在的脱窒活性は増加するが下層でははっきりした効果が認められない(図1)。表層の脱窒菌数は増加して潜在的脱窒活性と対応するが、下層の菌数と活性との相関は認められない。脱窒による窒素ロスは、下層0.1±0.2〜58.5±81.0、表層137.4±73.7〜1079.1±399.1kg-N/年/haと推定される。

  2. 表層クロボク層では、家畜スラリー還元量に対応して土壌深度別(5〜25cm,25〜45cm,45〜80cm)の脱窒菌数が増加するが(図2)、その数は基質無添加の脱窒活性よりも基質(グルコース及び硝酸カリウム)を添加した潜在的脱窒活性(図3)と高い相関を示す。土壌深度別の潜在的脱窒活性の平均寄与率は、それぞれ90,9.5,0.4%である。

  3. 表層クロボク層の年間推定脱窒量は、家畜スラリー還元量(0.60,150,300t/ha)に応じて、基質無添加の脱窒活性から15.6,20.0,41.5,94.7kg-N/年/haと、また潜在的脱窒活性から38.6,39.1,163.8,611.8kg-N/年/haと推定される。潜在的脱窒活性から推定した年間推定脱窒量と5カ年の調査結果に基づく平均的な年間未回収窒素量(60,150,300t/ha施用区で、それぞれ28,154,685kg-N/年/ha:生産管理研1998)とが対応する。

[成果の活用面・留意点]
  1. 脱窒菌数は普通肉汁培地で計数するため、土壌中に多数生存する低栄養要求型細菌群が評価されていない。

  2. 年間推定脱窒量は、単位土壌重量当たりの脱窒活性測定値から測定圃場の仮比重実測値、各土壌層の実測深度を基に計算した。

[具体的データ]

図1 家畜スラリー還元畑土壌における潜在的脱窒活性及び脱窒菌群の土壌層位別変動


図2 表層クロボク層における脱窒菌数の時期別・土壌深度別変動


図3 表層クロボク層における潜在的脱窒活性の時期別・土壌深度別変動

[その他]
研究課題名:下層土の脱窒活性に及ぼす微生物性因子の解明、南九州畑地下層土の脱窒菌群の動態解明
予算区分 :経常、自然循環
研究期間 :1999、2000〜2002年度

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