都市排水処理水のトマト栽培灌漑水としての利用
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[要約]
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新たな農業用水の水源として、塩素濃度200ppm以下の都市排水処理水はトマト栽培に対して有効に活用できる。
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- 農業用水、都市排水処理水、トマト
- [担当]
- 沖縄県農業試験場・化学部・土壌微生物肥料研究室
[連絡先]098-884-9909
[区分]九州沖縄農業・生産環境(生産環境)
[分類]行政・参考
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[背景・ねらい]
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沖縄本島中南部における那覇市周辺をはじめとする地域では、基盤整備事業の進捗に伴ってサトウキビ単作農業から、立地条件を生かした野菜、花き等の高収益な農業へと変わりつつある。しかしながら、これら地域の農業用水は、小規模なため池や河川水の汲み上げに頼っており不安定なものとなっている。これらの地域での農業用水水源のひとつとして、都市地域に豊富にある家庭排水処理水の利活用に着目し、新たな農業用水の水源としての可能性を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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使用した都市排水処理水の塩素濃度は140〜170ppmである(表1)。
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茎長、茎径、葉重、葉長及び葉巾は、処理水灌水区と水道水灌水区に統計的に有意差はない(表2)。
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葉緑素計示度は、処理水区が水道水に比較して有意に高く、ブリックスは処理水区でわずかに高くなる傾向である(表2)。
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葉中及び全草中のNaとFeが処理水区で有意に高く、また、Mnも全草の処理水区で高い(表3)。
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栽培跡土壌で、有機態炭素は水道水灌水区が、交換性Naと水溶性Naは処理水灌水区が高くなる(表4)。
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収量及び収穫個数には処理による有意差は認められない(表5)。
以上のことから、トマトに関しては都市排水処理水は農業用水資源としてトマト栽培に有効に活用できる。
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[成果の活用面・留意点]
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- 灌漑水の塩分濃度(Cl-として)は200ppm以下(畑地かんがい用水水質基準試案)とする。
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通年屋根掛け施設においては処理水での連続灌水を控える。
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[具体的データ]

表1 トマト栽培期間中の処理水の水質(月平均、具志川浄化センター)

表2 トマトの生育と品質(H13.1.29調査)

表3 トマト全草中の無機成分含量

表4 トマト栽培跡土壌の分析結果(2001/5/2サンプリング)

表5 トマトの収量と収穫個数
- [その他]
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研究課題名:都市排水処理水利活用調査
予算区分 :国庫受託(総合事務局土地改良事務所)
研究期間 :1998年〜2001年度
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