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冬作物を基幹とする水田作複合経営における転作および作業交換の所得向上効果


[要約]
野菜作(トンネルごぼう)および工芸作(たばこ)を基幹とする水田作複合経営において、基幹作物と転作作物(大豆)の組み合わせ体系を導入すると、基幹作物の規模拡大により所得が向上する。また、農繁期の作業交換を行うと土地利用型作物の増加によりさらに所得は向上する。

[キーワード]
水田作複合経営、転作作物、作業交換

[担当]
九州沖縄農研・総合研究部・経営管理研究室

 [連絡先]096-242-7695
 [区分]九州沖縄農業・農業経営
 [分類]技術・参考

[背景・ねらい]
九州地域には、暖地の特性を活かし冬作物を経営の基幹とする多様な水田作複合経営が存在しているが、基幹冬作物の規模拡大を図るほど水稲作との競合が激しくなり、これが拡大を抑制する要因となっている。そこで、水稲作より競合緩和の可能性が高い大豆作等を転作に活用することや、農繁期構造の違いに着目した作業交換による所得向上効果を明らかにし、暖地水田作複合経営の安定化に資する。

[成果の内容・特徴]
  1. 野菜作(トンネルごぼう)および工芸作(たばこ)を基幹とする水田作複合経営(以下、たばこ経営、ごぼう経営とする)において、二毛作を前提としつつ基幹作物−大豆の体系を導入すると、基幹作物の作付面積の拡大が可能で、ごぼう経営で約150万円、たばこ経営で約40万円の所得向上が見込まれる(表1図1)。

  2. 共通作物(水稲、麦、大豆)の機械作業のうち、作業交換(機械は委託側が調達し労働力のみ提供する方式)による所得向上効果が大きい作業は、ごぼう経営が大豆収穫委託(ごぼうの播種・前後作業、麦播種作業との競合緩和)、たばこ経営が大麦収穫委託(たばこの収穫・管理、水稲移植前作業との競合緩和)である。

  3. この2作業の交換により基幹作物の作付面積はやや減少するが、大豆および大麦の作付面積拡大により両類型ともに所得が向上する。両類型の所得向上額を均衡させる作業受託料金は約7千円であり、その時の所得向上額は約40万円となる(表1,図1)。

  4. これを土地利用面から見ると、ごぼう経営においては一部の稲麦二毛作体系を除くと、大豆−大麦−水稲−ごぼう、大豆−ごぼう−水稲−大麦、大豆−大麦−水稲−大麦の2年一巡体系となる。これに対してたばこ経営においては、大豆−大麦−水稲−たばこの2年一巡体系と、1年借り換えの大麦−大豆体系によって構成される(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 異なる類型の水田作複合経営が併存する地域において、生産調整推進や組織化を図る場合の参考となる。なお、九州中部地域において活用できる。

  2. 試算にはXLP(中央農業総合研究センター大石亘氏作成)を用いた。

  3. 所得には生産調整助成金の影響が大きい。また、価格条件は平成12年産の単年の値を用いており、価格変動により所得向上額は変化する。

[具体的データ]

表1 2類型における所得向上効果


図1 転作活用・作業交換に伴う作付面積の変化


図2 2類型における土地利用推移模式図(転作活用・作業交換ありの場合)

[その他]
研究課題名:暖地における水田畑作物の経営類型間結合による地域営農システムの成立条件の解明
予算区分 :21世紀プロ4系
研究期間 :1999〜2001年度

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