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細胞選抜による低温耐性サツマイモの作出法


[要約]
サツマイモの茎頂から誘導した再分化能の高い胚発生カルスに、低温条件を段階的に強めて選抜を繰り返すことで、低温耐性の胚発生カルスが獲得できる。そのカルスから再分化させると低温障害に強い低温耐性サツマイモが作出できる。

[キーワード]
サツマイモ、胚発生カルス、細胞選抜、低温耐性

[担当]
鹿児島バイオ研・細胞機能研究室

 [連絡先]0994-62-4112
 [区分]九州沖縄農業・植物バイテク
 [分類]技術・参考

[背景・ねらい]
サツマイモは熱帯・亜熱帯原産の作物であるが、従来より低温に強い品種が育成できれば、作期の拡大や早植の無マルチ栽培など作型の拡大を図ることが可能となる。また、畦内貯蔵期間の延長が可能になることで収穫労力の分散や貯蔵中の品質保持、低コスト化など様々な効果が期待できる。そこで、サツマイモの胚発生カルスに低温負荷と選抜を繰り返して行うことで、低温に強いサツマイモを育成する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. サツマイモ「高系14号」系統(ベニサツマ)の茎頂部位から再生能の高い胚発生カルスを誘導する。

  2. 胚発生カルスに摂氏10度・6週間の低温処理後、摂氏25度の常温下で生存カルスの選抜を行い、さらに、摂氏7度もしくは摂氏4度の低温処理による選抜を繰り返すことで、マイナス摂氏1度・7日間の低温遭遇後も生存率が無選抜胚発生カルスに対して有意に高い低温耐性胚発生カルスを選抜できる(図1)。

  3. 低温耐性の胚発生カルスから再生した植物体を、培養ビンごと摂氏4度・7日間、暗黒で低温に遭遇させた場合、低温選抜を行っていない同サイズの茎頂培養個体と比較して、葉や芽の生存率は著しく高く(表1)、さらに、これらの再生個体の中から低温遭遇後も葉や芽が全く枯死しない低温耐性個体が選抜できる。

  4. サツマイモ茎頂培養植物における低温処理後の腋芽生存率は、貯蔵性・萌芽性に優れる「シロサツマ」や「ベニオトメ」で高く、劣る品種で低い傾向が認められる。また、「高系14号」の選抜カルスから再生した個体では、上記品種を上回る高い腋芽生存率を示し(表1)、品種間差を超える低温耐性が付与できる。

  5. サツマイモの苗を水ざしし摂氏4度・5日間の低温に遭遇させた場合、一般のウィルスフリー苗は低温障害により枯死するのに対し、低温耐性サツマイモは次年度に育苗した苗でも壊死等の低温障害が少なく(図2)、低温耐性を維持している。

[成果の活用面・留意点]
  1. カルス形成に品種間差はあるが、再分化能の高い胚発生カルスを誘導して使用する。

  2. 貯蔵性や萌芽性の優劣は低温遭遇後の腋芽生存と関連が強く、低温遭遇後の腋芽生存率は、これらの特性に優れた個体の選抜指標となり得る。

[具体的データ]

図1 マイナス摂氏1度・7日間の低温処理に対するサツマイモ細胞の生存率


表1 サツマイモ培養植物に対する摂氏4度・7日間の低温処理後の生育反応


図2 サツマイモ苗に対する摂氏4度・5日間の低温処理後の生育反応

[その他]
研究課題名:サツマイモの新品種育成のためのバイオ技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2001年度

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