水稲奨励品種「さきひかり」の生育特性と食味特性
- [要約]
- 水稲「さきひかり」は「コシヒカリ」に比べ、出穂期で5日程度、成熟期で10日程度遅い早生の晩である。止め葉は立ち草姿は極良で、多収である。玄米の外観品質がやや劣るものの、食味は優れている。
- [キーワード]
- 奨励品種、良食味、多収、早期水稲、さきひかり、粳種
- [担当]
- 宮崎県総合農業試験場・作物部
[連絡先]電話0985-73-2627
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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宮崎県の2001年の早期水稲作付では、約96%が「コシヒカリ」で占められており、一品種集中による収穫作業や乾燥施設利用の競合、病害虫や気象災害の集中被害などの問題が起きている。また、近年の米の需給動向により、東臼杵や児湯の一部など「コシヒカリ」の収穫時期が遅い地域については価格が低下している状況にある。「コシヒカリ」と作期分散ができ、食味が「コシヒカリ」と同等以上に良く、栽培特性が優れた品種に対する要望が行政、生産者から強く求められている。「さきひかり」はこれらの条件を満たした有望な品種であり、奨励品種にして普及を図り、宮崎県の早期水稲の評価向上と販路拡大に寄与する。
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[成果の内容・特徴]
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「さきひかり」(ヒノヒカリ/キヌヒカリ:福井県農業試験場)は「コシヒカリ」と比較して次のような特性を有する。
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出穂期で5日程度、成熟期で10日程度遅い“早生の晩”の熟期である(表1)。
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稈長は短く、耐倒伏性は優り、“やや強”である(表1)。
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穂長は長いが、穂数はやや少ない(表1)。
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止め葉は立ち、草姿は極良である。
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玄米の千粒重は1g程度大きく、粒大は“やや大”である(表1)。
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収量性は、多収である(表1)。
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玄米の外観品質は心白粒の発生がやや多く、やや劣る(表2)。
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食味は外観、粘りともに良く、優れている。また、アミロース含有率とタンパク含有率が低い(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
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早期水稲地帯の作期分散を図る必要のある地域及び収穫の遅い地域を対象に、「コシヒカリ」の一部に替えて、約2,500haに普及予定である。
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いもち病に“やや弱”なので、適期防除に努める。
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成熟期間が長いので落水時期に気をつけ、適期刈り取りに努める。
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[具体的データ]
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表1 生育・収量調査

表2 玄米品質及び検査等級

表3 食味官能評価及び精米成分含有率
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[その他]
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研究課題名:奨励品種決定調査及び原原種生産
予算区分 :一般県費
研究期間 :1997〜2002年度