晩生良質良食味の新品種候補系統「鹿児島糯9号」
- [要約]
- 水稲「鹿児島糯9号」は、暖地における熟期が晩生で、鹿児島県の在来品種「溝下糯」の栽培特性を改良した良質な糯米系統である。玄米の白度が高く、餅のきめが細かく食味も優れる。餅の他、赤飯、おこわ、ちまき、菓子等への加工利用が期待される。
- [キーワード]
- 水稲、鹿児島糯9号、晩生、溝下糯、糯米
- [担当]
- 鹿児島県農試・作物部
[連絡先]電話099-268-3231
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい]
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鹿児島県の在来品種「溝下糯」は、大正15年から昭和35年まで本県の奨励品種で、糯米としての品質は極めて優秀で、県内はもちろん京阪地方で取引されていた。その後、稈長が長く耐倒伏性が劣ること、いもち病に弱いことから、栽培面積は減少しているが、現在数ヘクタール程度栽培されている。そこで「溝下糯」の餅質を有し、栽培特性の優れる糯品種が要望されている。
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[成果の内容・特徴]
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「鹿児島糯9号」は、鹿児島県農業試験場において、在来の極良質糯品種「溝下糯」の栽培特性の改善を目標に、「溝下糯」から純系分離した「溝下糯3号」を母、「サイワイモチ」を父として、1994年に交配した組合せから育成された糯米系統である(表1)。
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「サイワイモチ」と比較して、出穂期で11日、成熟期で15日遅い晩生種である(表1)。
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「サイワイモチ」と比較して、稈長及び穂長は長く、穂数は少ない“偏穂重型”である。穂発芽性は“易”であるが,「溝下糯3号」より稈長は32cm短く,耐倒伏性は“中”である(表1)。稈質は“やや剛”で、止葉が直立し、草姿は良好である。
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芒の多少は“少”で長さは“中”。ふ先色、頴色、護頴色を有し、色は“紫色”。脱粒性は「サイワイモチ」並の“中”である(表1)。
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いもち病真性抵抗性遺伝子“Pita-2”を持つと推定される。白葉枯病圃場抵抗性は“中”である。(表1)。
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収量性は「サイワイモチ」と同程度である。玄米の粒の大きさは“小粒”である。玄米の白度が高く光沢は良好で、外観品質は“上中”である(表1)。
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餅は白く、きめ(餅肌)が細かく、のびが良い。餅の食味は“上中”である(表1、表2)。餅の硬化速度は遅く、軟らかい特性を有する(表1)。
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[成果の活用面・留意点]
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鹿児島県内における地域特産品や加工利用として普及を図る。
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「サイワイモチ」に比べて稈長がやや高いので倒伏に注意し、多肥栽培はさける。
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真性抵抗性遺伝子“Pita-2”により、通常ではいもち病の発生は見られないが、いもち病菌によっては激発の恐れもあるので、侵害菌の動向に注意する。
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[具体的データ]
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表1 特性一覧(育成地)

表2 餅の食味(育成地)
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[その他]
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研究課題名:普通期水稲新品種育成試験
予算区分 :県単
研究期間 :1994〜2002年度