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麦芽品質の優れるビール大麦「ほうしゅん」を佐賀県で奨励品種に採用


[要約]
ビール大麦「ほうしゅん」は、「あまぎ二条」より3日早い早生で、収量、品質は同程度である。うどんこ病、大麦縞萎縮病に抵抗性で、「ニシノゴールド」以上の麦芽品質を持っている。

[キーワード]
早生、うどんこ病、大麦縞萎縮病、麦芽品質

[担当]
佐賀県農試セ・バイオテクノロジー部・水稲育種研究室

[連絡先]電話0952-45-2141	
[区分]九州沖縄農業・水田作	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
本県はビール大麦の主産地であり、「あまぎ二条」を主体に「ニシノゴールド」、「ミハルゴールド」等が作付されている。「あまぎ二条」は栽培適性が優れているが、大麦縞萎縮病、うどんこ病に弱く、凸腹粒等の被害粒が発生しやすいことから、近年では収量、品質の低下が大きい。一方「ニシノゴールド」は大麦縞萎縮病に強く麦芽品質が優れるが、やや小粒で裂皮粒が発生し易く、作柄が不安定である。また、「ミハルゴールド」は良質、多収で麦芽品質が優れているが、「あまぎ二条」よりやや遅い晩生である。従って、作期の拡大と安定した品質、収量を確保し、ビール大麦契約量の達成を図るには、良質、多収で、実需者ニーズに応じて麦芽品質がより優れ、雨害の危険性が少ない早生品種の選定が必要である。

[成果の内容・特徴]
「ほうしゅん」は福岡県農業総合試験場(指定試験地)において、「吉系19」を母、「関東二条25号」を父としたF1にHordeumbulbosumを交配し、作出した半数体を倍加して育成されたもので、その特性は「あまぎ二条」と比較して以下のとおりである。

  1. 出穂期は3〜4日、成熟期は3日早い早生種である(表1)。

  2. 稈長は同程度で、穂長はやや短い。穂数はやや多い(表1)。

  3. 耐倒伏性はやや優れる(表1)。

  4. 大麦縞萎縮病、うどんこ病に強く、赤かび病抵抗性は同程度である(表1表4)。

  5. 側面裂皮粒はわずかに多いが、凸腹粒の発生は少ない。外観品質は同程度である(表2)。

  6. 千粒重は重く、整粒歩合は高い。収量性は同程度である(表2)。

  7. 麦芽エキス、エキス収量及びジアスターゼが高く、麦芽品質は極めて優れる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 穀皮が薄いので、剥皮を生じないよう脱穀調製に留意する。

  2. 極端な早播は側面裂皮粒の発生による品質低下と、出穂の早まりによる不稔粒の発生を招くので、適期播種に努める。

  3. 整粒歩合向上と適正タンパク値(10〜11%)を厳守するため、多肥栽培は避ける。

[具体的データ]

表1 生育調査


表2 収量、品質調査


表3 麦芽品質


表4 現地試験成績

[その他]
研究課題名:麦類奨励品種決定調査事業
予算区分 :経常
研究期間 :1993〜2001年度