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秋播性小麦品種「イワイノダイチ」の播種早限


[要約]
平坦地で「イワイノダイチ」を早播する場合の早限は、11月3半旬である。これにより寒害を回避でき、標準播と同程度の収量・品質が得られ5月中の収穫が可能である。標高の高い地域では幼穂凍死型寒害の被害は軽減できるが、回避はできない。

[キーワード]
秋播性小麦、寒害、茎立期、播種早限

[担当]
大分農技セ・水田利用部、大分農技セ・久住試験地

[連絡先]電話0978-37-1141	
[区分]九州沖縄農業・水田作	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
暖地の小麦作では、収穫期の雨害や水稲との作期競合を回避するため早生化が求められている。大分県で平成11年に認定品種に採用した「イワイノダイチ」は秋播性が高く、早播による寒害を回避しつつ成熟期の前進化が期待できる。そこで、早播栽培において収量・品質が安定する播種時期の早限を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 平坦地(宇佐:標高8m)で早播(11月2〜3半旬)した場合、イワイノダイチの茎立期は2月15〜21日であり、チクゴイズミの2月2〜13日より遅いうえ年次変動が小さく、幼穂凍死型の寒害の発生は軽微である(図1表2)。

  2. 平坦地におけるイワイノダイチの早播では、出穂期の年次変動も小さく、成熟期は5月26〜28日となり、標準播(11月5半旬)に比べ3〜5日早い。また、収量・検査等級は標準播と同程度で安定している(表1)。

  3. しかし、年次により花粉不稔型寒害が発生することがある(表2)。花粉不稔型寒害が発生する低温(穂孕期:摂氏-1度以下、出穂期:摂氏0度以下)の出現頻度は、11月2半旬播種の出穂期に当たる4月1半旬までは高いが、11月3半旬播種の出穂期に当たる4月2半旬では低い(図2)。このため、安全な播種期は11月3半旬以降である。

  4. 高標高地(久住:標高544m)においては、イワイノダイチの茎立期はチクゴイズミに比べ遅く、年次変動も小さいが(データ略)、早播(10月4半旬)では幼穂凍死の発生が多く、標準播(10月6半旬)でも幼穂凍死は回避できない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 平坦地における小麦栽培の播種期幅を拡大できる。

  2. 早播した場合、標準播と同様の栽培法では稈長が伸び穂数が増加し、倒伏し易くなるため、生育制御が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:中山間を含む中九州地域における早生小麦品種・系統の高位安定栽培技術の確立
予算区分 :21世紀プロ[I]系
研究期間 :1998〜2001年度