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ホールクロップサイレージ用イネ適品種「西海204号」と「クサユタカ」


[要約]
ホールクロップサイレージ用イネは、「西海204号」が黄熟期のTDN収量でa当たり100kg程度が得られ、栽培特性も優れる。また、高標高地で食用品種と作業が競合する場合は極早生種の「クサユタカ」で回避できる。

[キーワード]
飼料イネ、ホールクロップサイレージ、品種、TDN

[担当]
大分農技セ・久住試験地

[連絡先]電話0974-76-0033	
[区分]九州沖縄農業・水田作	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
米の生産調整において水田の多様な利活用が求められており、その一つとして稲のホールクロップサイレージ(WCS)が導入されつつあり、その専用品種も育成されつつある。そこで、TDN収量や耐倒伏性、耐病性等の栽培特性に加え、脱粒性(難)や穂発芽性(易)、識別性等の食用品種とは異なる必要特性を考慮してWCSに適した飼料イネ品種を選定する。

[成果の内容・特徴]
  1. 「西海204号」の出穂期は「ヒノヒカリ」より遅く、「レイホウ」より早い“晩生の早”で、「クサユタカ」は「はえぬき」よりやや遅い“極早生”である(表1)。

  2. 「西海204号」の耐倒伏性は“強”、「クサユタカ」は“やや強”である(表1)。

  3. 収穫、調製時のロスに関係する脱粒性は両品種系統とも“難”で優れ、いもち病は真性抵抗性により現在は発病が見られない(表1)。

  4. 両品種系統の穂発芽性は“易”及び“やや易”とみられ、食用水稲栽培に戻した場合の前年落下籾からの漏生の危険性は穂発芽性難品種より低くなる。また、粒は共に大きく、食用品種との識別性は高い(表1)。

  5. 「西海204号」は黄熟期のTDN(可消化養分総量)含量が他品種よりやや高く、TDN収量はa当たり100kg程度が得られる(図1図2)。

  6. 糊熟期から黄熟期に収穫する場合、低標高地では晩生の「西海204号」でも食用の主力品種「ヒノヒカリ」より先に収穫が可能である。また、「西海204号」は高標高地では食用の主力品種「ひとめぼれ」と競合するが、2〜3週間早い収穫が可能な「クサユタカ」を利用することで競合が回避できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 両品種とも当面いもち病の発生は無いが、いもち病菌のレース分布に注意する。

  2. 次年度の漏生の危険性は残るので、食用水稲栽培に戻す場合は早めの代かきや漏生の抑制効果がある除草剤を使用する等の対策をとる。

[具体的データ]

表1 ホールクロップサイレージ用品種系統の諸特性


図1 黄熟期の乾物収量及びTDN含量


図2 黄熟期TDN収量


図3 標準的収穫時期

[その他]
研究課題名:中山間地域における飼料イネの栽培・利用技術の確立
予算区分 :助成試験(新技術実用化型)
研究期間 :2000〜2002年度