分げつ期の多雨による小麦の収量・品質低下と対応技術
- [要約]
- 小麦の分げつ期の多雨(300mm以上)によって、土壌中の無機態窒素が溶脱するため、茎数の増加が抑えられ、有効穂数が減少して収量が低下する。この場合、第2回追肥を窒素量で10a当たり4kg施用すると減収を抑えることができる。
- [キーワード]
- 小麦、分げつ期、多雨、無機態窒素、追肥
- [担当]
- 福岡農総試・農産研・栽培部・作物栽培研
[連絡先]電話092-924-2848
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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小麦の民間流通に伴って、これまで以上に高品質安定生産が求められるようになっている。一方、小麦の収量及び品質は気象条件に左右されやすく、平成10年産のように、生育期間中、特に小麦の分げつ期である1〜2月の降水量(297mm)が著しく多く、茎数および穂数が確保されずに低収となる年次がある。そこで、分げつ期の多雨が小麦の収量・品質に及ぼす影響を明らかにし、それに対応した施肥技術を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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小麦の分げつ期の多雨によって、土壌中の無機態窒素が溶脱する(表1、表2)。
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分げつ期に降雨量が300mm以上になると、茎数の増加が抑えられ、窒素吸収量や有効穂数が減少するため収量が低下する。また、原麦のタンパク質含有率も低下する(表3、表4)。
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多雨に対応する施肥技術として、第2回追肥(3月上旬)の10a当たり窒素量を施肥基準より2kg増肥して4kgにすると、有効穂数が確保され、減収率を3〜10%に抑えることができる。さらに、原麦のタンパク質含有率が増加する(表4)。
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[成果の活用面・留意点]
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小麦の生育初期の多雨条件下における栽培技術として活用できる。
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第2回追肥を増肥することによる成熟期の遅れは1日程度である。
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排水が良好な砂壌土の麦圃に適用できる。
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[具体的データ]
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表1 土壌中の無機態窒素含量

表2 自然降水量と土壌の無機態窒素含量

表3 多雨条件下における施肥法と小麦の茎数および穂揃期の窒素吸収量

表4 多雨条件下における施肥法と小麦の収量および品質
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[その他]
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研究課題名:小麦の作期早進化による高品質生産技術の確立
予算区分 :国庫(21世紀プロ)
研究期間 :1999〜2000年度