玄米の品質劣化程度を用いた水稲の高温耐性検定法
- [要約]
- 暖地の圃場では水稲を7月中旬に出穂させると、高温登熟により玄米品質を低下させることができる。高温登熟による玄米品質の劣化程度は、背白と基白の発生程度の合計値で表わせ、この合計値を基準品種と比較することで高温耐性の強弱を検定できる。
- [キーワード]
- 暖地、高温登熟、高温耐性、玄米品質、背白、基白、基準品種
- [担当]
- 鹿児島県農業試験場作物部水稲育種指定試験地
[連絡先]電話099-268-3232
[区分]九州沖縄農業・水田作
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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近年、地球温暖化や異常気象の影響で水稲の登熟期間が高温になり、玄米の品質が劣化する現象が暖地・温暖地のみならず北陸、東北地域でも問題になってきている。そこで、玄米品質の劣化程度を指標とした高温耐性検定法を開発し、高温耐性品種の育成に資する。
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[成果の内容・特徴]
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水稲の玄米品質は、登熟期の高温により背白、基白が特異的に多く発生し、玄米品質が劣化する(表1)。
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とくに背白は、出穂後10〜30日の最低気温(夜温)が高くなると発生が多くなる(表2)。
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高温登熟による背白、基白の発生程度には明らかな品種間差があり、発生が多いほど高温耐性が弱い。高温耐性の品種間差は、背白、基白の発生程度をそれぞれ0〜9の10段階で達観により評価した合計値によって表すことができる(表3)。
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高温耐性の判定は、この合計値を基準品種と比較して行う。高温耐性弱の基準品種には毎年安定して背白、基白の発生の多い「初星」、強の基準品種には「越路早生」を用いる。この2品種のそれぞれの合計値をもとに強、やや強、中、やや弱、弱にランク分けし、高温耐性を判定する(表3)。
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この暖地圃場の検定に適した温度の目安は、平均気温摂氏28〜30度、最低気温摂氏24〜25度、夜温摂氏25〜27度である(表4)。
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[成果の活用面・留意点]
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圃場で材料を養成し、玄米を達観で調査するので多数系統の検定が可能となり、育成系統の高温耐性の選抜に利用できる。
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検定材料は7月中旬に出穂させるために5月中旬に移植する。
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「日本晴」以降に出穂する品種では、登熟気温がやや低くなり背白、基白の発生が不安定となることがあるので、今後この熟期群の基準品種を選定する必要がある。
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水管理の違いにより背白、基白の発生が異なることがあるので、常時湛水して検定材料を養成する。
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[具体的データ]
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表1 登熟温度の違いと玄米品質(2002年)

表2 背白の発生と出穂期からの気温(2000〜2002年、圃場)

表3 高温耐性の判定

表4 出穂期と登熟気温(出穂後30日)
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[その他]
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研究課題名:高温耐性および紋枯耐病性の評価(21世紀プロ)
予算区分 :委託試験研究期間:2000〜2002年度