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国頭マージ土壌畑における土砂流出防止のための被覆作物の播種条件


[要約]
国頭マージ土壌畑では、被度70%以上の植生による被覆によって40mm/時間の降雨まで土砂流出はほとんど起こらない。生育の速いセタリアグラスを2月中旬に播種すると、沖縄本島の梅雨開始までに70%以上の被度が確保できる。

[キーワード]
国頭マージ土壌、土砂流出防止、被度

[担当]
九州研・畑作研究部・生産管理研究室、九州研・環境資源研究部・土壌資源利用研究室

[連絡先]電話0986-22-1506	
[区分]九州沖縄農業・畑作、作物・夏畑作物	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
沖縄本島をはじめ南西諸島の国頭マージ土壌畑では、強度が大きい降雨のため圃場から多量の土砂が流出し、土壌生産力の低下や海洋汚染を招いている。特に、梅雨期から台風襲来時期にかけては40mm/時間を超える強い雨が頻繁に降るため、沖縄県では土地基盤整備の際の圃場の傾斜を3%以下にするよう指導している。ここでは、一定の降雨強度に対して土砂流出防止に有効な被度や降雨開始後の土砂流出防止効果の推移を明らかにし、流出防止に有効な被覆作物の播種条件を提示しようとした。

[成果の内容・特徴]
  1. 土壌表面の被覆程度が大きいほど土砂流出量は少なく、降雨強度ごとに土砂流出防止効果をみると、被度が14%では30mm/時間の降雨に耐えられ、74%では40mm/時間の降雨まで土砂流出がほとんど生じない(図1)。

  2. 降雨開始からの経過時間と単位容積当たりの土砂流出量との関係をみると、降雨開始20分後の土砂流出量が最も多く、土壌表面の被覆による土砂流出防止効果も高い。単位容積当たりの土砂流出量はその後緩やかに減少し、降雨開始90分後には裸地との差はほとんど見られなくなる(図2)。

  3. 土砂流出量低減に対する地下部単独の効果は認められず、地上部による被覆によって土砂の流出は減少する(表1)。

  4. 沖縄本島における梅雨期(5月上旬〜6月中旬)の開始までに植生で土壌表面を被覆し40mm/時間の降雨で土砂流出を生じさせないようにするには、播種量よりも播種日が被度の確保に重要な役割を持ち、生育の速いセタリアグラスでは2月11〜13日前後、シグナルグラスでは1月16〜25日には播種する必要がある(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 降雨強度と植生被覆による土砂流出防止効果との関係は、人工降雨実験施設におけるモデル試験の結果であり、本成果を現地に適用するには現地圃場での実証が必要である。

  2. セタリアグラスとシグナルグラスのような永年性の牧草では、長期間生育させると根系が発達するため、根張りによって土が抑えられる効果も無視できなくなる。

[具体的データ]

図1 降雨強度と土砂流出量との関係


図2 単位容積当たり土砂流出量の推移


表1 土砂流出防止効果に与える地下部の影響


表2 降雨期までに想定被度に達するための播種日

[その他]
研究課題名:栽培管理による牧草等の植生帯の維持技術の確立,土壌及び水分制御の適正管理のための土壌管理技術
課題ID:07-03-02-01-05-02
予算区分 :公害防止「細粒赤土」、地域総合「亜熱帯」
研究期間 :1996〜1998年度、1999〜2002年度