Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成14年度目次

優良シバ型草種の選定と吹付け法による法面等の簡易草地造成技術


[要約]
センチピードグラスやカーペットグラスは在来(育成)ノシバ等に比べ、広がりが速く早期造成が容易であり、かつ乾物消化率も高い。センチピードグラスは可消化収量が最も高い草種である。そして、法面等の条件不利地における吹付け法による播種は、簡易の造成技術として有効である。

[キーワード]
センチピードグラス、早期造成、乾物消化率、可消化収量、吹付け法、簡易造成技術

[担当]
熊本農研セ・畜産研究所・飼料生産利用部

[連絡先]電話096-248-6433	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
低標高地域における耕作放棄地等の有効利用による肉用牛の省力・低コスト生産を推進するためには、草種(品種)の選定や放牧草地の造成と利用技術の検討が重要である。そこで、低標高地域における放牧に適したシバ型草種(品種)を選定するとともに、放牧草地の簡易造成技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
  1. 優良シバ型草種の選定

    1)センチピードグラスやカーペットグラスは、在来(育成)ノシバに比べて広がりが速く、早期造成が容易である(図1)。また、センチピードグラスは、移植法に比べ播種法による造成が容易である(図1)。

    2)センチピードグラスやカーペットグラスは、在来(育成)ノシバに比べて乾物消化率が高い(図2)。また、各草種とも5〜6月の乾物消化率が高く、それ以降は低下する傾向にある(図2)。

    3)乾物収量はアケミドリ、可消化収量はセンチピードグラス(播種)が最も高い(図3)。

  2. 吹付け法による造成技術

    1)センチピードグラス等は種子が小さく(表1)、吹付けによって均一播種が可能となる。

    2)センチピードグラス種子(3kg/10a)を用いて、吹付け法によって法面を草地造成した結果、1ヵ月後から急速に広がり始め、約130日で60%の被度となった(写真1図4)。

    3)吹付け法における機材コストは289,853円である。また、10アール当たり、資材コスト(25,358円)の約93%は種子代であり、作業時間は30分(3人)である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 優良シバ型草種の選定

    1)センチピードグラス等は播種とし(適期:5月、播種量:2〜5kg、平均3kg/10a)、栄養茎繁殖の在来(育成)ノシバは移植とする(適期:6月、株数:4,000〜10,000株/10a、3〜4茎/株)。

    2)施肥は10a当たり、基肥として炭酸苦土石灰50〜100kg、窒素・リン酸、カリ各5kg程度、追肥として窒素・カリ各4kg程度を施用する(年1回、退牧時)。

    3)シバ型草種は初期生育が遅く、雑草と競合するため、除草対策(掃除刈り、除草剤、強放牧)とともに、雑草繁茂時の施肥を抑制することが重要である。

    4)センチピードグラスはカーペットグラスに比べ種子価格が高いことに留意する。

  2. 吹付け法による造成技術

    1)法面の他、傾斜地や岩石の多い平坦地等条件不利地にも有効である。

    2)より良好な定着を確保するため、雑草や夾雑物の除去を入念に行う。

    3)施肥は追肥を原則として、窒素・リン酸、カリ各5kg程度を年1回、退牧時等に施用する。

    4)発芽後生育が遅いため、放牧牛による蹄傷が懸念されるときは、電牧等で保護する。

[具体的データ]

図1 造成後80日目におけるシバ型草種の被度


図2 シバ型草種の乾物消化率(酵素法)の推移


写真1 草地法面への吹付け作業


図3 シバ型草種の年間収量(3年間平均)


図4 法面への吹付け造成後の被度の推移


表1 千粒重(g)


表2 吹付け法による造成コスト及び作業時間

[その他]
研究課題名:平地及び中間農業地域における牧草地の造成と有効利用技術
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2004年度