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暖地高標高地域における周年放牧に有効な短年性草種の混播


[要約]
永年牧草であるオーチャードグラスやトールフェスクの寒地型牧草と短年性草種であるハイブリッドライグラスやイタリアンライグラス晩生種を混播することにより、年間収量のみでなく、春期・秋期の収量や栄養収量も増加する。

[キーワード]
寒地型牧草、短年性草種、年間収量、春期・秋期の収量、栄養収量

[担当]
熊本農研セ・草畜研

[連絡先]電話0967-32-1231	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
近年、繁殖牛の周年放牧技術が広まりつつあるが、その基盤となる草地は既存の寒地型草地を用いたASP(秋期備蓄草地)によるものであるため、草地に余裕のある牧野以外には普及していないのが現状である。そこで、放牧期間の延長や周年放牧の拡大を推進するため、春や秋の生産性が高い草種・品種を選定する。

[成果の内容・特徴]
  1. 基幹草種であるオーチャードグラス(OG)とトールフェスク(TF)との混播により収量を増加させたのは、イタリアンライグラス晩生種(IR晩生種)>ハイブリッドライグラス(HR)>リードカナリーグラス(RC)>イタリアンライグラス早生種(IR早生種)の順である(表1)。

  2. 寒地型牧草と適度な草種構成を維持できた短年性草種はハイブリッドライグラスとイタリアンライグラス晩生種で、これらの混播により秋期の乾物収量は4年間の平均で、300〜600(平均450)kg/ha程度増加する(図1図3)。

  3. 播種翌年からの春期における乾物収量は4年間平均で、170〜340(平均255)kg/ha程度増加する(図1図3)。

  4. 栄養価は、ハイブリッドライグラスやイタリアンライグラス晩生種、ペレニアルライグラスの混播によりやや高くなる(図2)。

  5. 草地造成は8月下旬から9月中旬までに実施し、草地造成時の播種量はオーチャードグラス:トールフェスク:短年性草種をそれぞれ、20:15:20kg/ha程度とする。

  6. リードカナリーグラスは経年的に構成割合が多くなり、増収するが、家畜の嗜好性が劣るとともに冬枯れを起こし、周年放牧には適さないことから実用性は低い(表1,図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は高標高地域である標高900m程度における成果であり、標高600m未満の低・中標高地域には適用できない。

  2. イタリアンライグラスを利用する場合は極晩生種を使用するが、夏期の高温や乾燥などの影響を受け夏枯れが発生したり、標高によって基幹牧草を抑圧する可能性があるので、播種量は半分程度に減量する。

[具体的データ]

表1 各混播草地における乾物収量の推移(t/ha)


図1 春・秋における平均収量


図2 TDNの推移(播種4年目)


図3 混播草種の消長

[その他]
研究課題名:夏期生育牧草と冬期生育牧草の組合せによる周年利用可能草地の技術開発
予算区分 :受託研究(日本草地畜産種子協会:周年利用可能草地技術開発事業)
研究期間 :1998〜2001年度