マクロシードペレットと蹄耕法の組み合わせによる野草地の牧養力向上
- [要約]
- 草量が乾物で7、500kg/ha程度のススキ優占野草地は播種前後にha当たり成牛10頭(500kg)を10日間程度の放牧圧を加え、マクロシードペレットを1,000kg/ha程度施用することにより、放牧を実施しながら容易に牧草が導入でき、播種翌年から400〜500CD/ha程度の牧養力が望める。
- [キーワード]
- ススキ優占野草地、マクロシードペレット、放牧圧、牧養力
- [担当]
- 熊本農研セ・草畜研
[連絡先]電話0967-32-1231
[区分]九州沖縄農業・畜産草地
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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阿蘇地域ではこれまで種々の事業により1万ha程度の草地造成が行われてきているが、牧野組合によっては改良草地が不足し、放牧頭数を制限している組合もある。これらの組合では草地改良による牧養力向上を図る必要があるが、草地造成には多額の費用を要すること、残存野草地は傾斜が強く、草地造成によるエロージョン発生の懸念があり、草地改良を躊躇している。そこで、低コストで、放牧を実施しながら草地造成が可能な蹄耕法とマクロシードペレットを組み合わせた野草地の牧養力向上技術を確立する。
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[成果の内容・特徴]
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マクロシードペレットは、市販の固形肥料(牧草用773号)に水で少し薄めた洗濯糊で牧草種子(30kg/ha)を貼り付けて作成する。野草地全体の草量には施用量による差がないことから、施用量は1,000kg/ha程度とし、8月下旬から9月中旬頃までに散播する。
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牧草の発芽・定着にはマクロシードペレットの多少よりも播種前後の放牧が有効である(表1)。
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牧草現存量は播種後の放牧の有無とペレットの多少に影響され、播種後放牧有+ペレット多量で多い傾向を示し、野草は逆に播種後放牧無で多くなる傾向にある(表2)。
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ススキ型野草地ではマクロシードペレットの播種前後に放牧を組み合わせることにより、乾物で年間3,800〜6,800kg/ha程度の牧草収量を得ることができ(表2)、栄養価(利用TDN収量)は野草のみの場合よりも平均520kg/ha程度多く得ることができる(図1)。
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マクロシードペレットで牧草を導入することにより、牧養力(CD/ha)は播種翌年で390、利用2年目は540と利用1年目よりも高く推移し、野草のみの場合よりも340CD/haも高くなり(表3)、特に、野草の採食率が低下する晩秋期においても高い牧養力を維持できることから、放牧期間の延長にも有効である。
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[成果の活用面・留意点]
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播種前後の放牧に当たっては家畜の損耗を招かないよう、草量が少ない場合は頭数を減らすか、補助飼料の補給を行う。
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マクロシードペレットに使用する草種はオーチャードグラスやトールフェスクを用いるとよいが、高標高地でもススキ以外の野草(特に、ノシバなど)が優占する場合や600m未満の低標高地帯への応用に当たっては草種・品種の選定に注意を要する。
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大面積での散布を行う場合は、(独)東北農業研究センターで開発された散布機システムを利用するとよい。
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牧草の定着を促進させるためには、年1回(夏期)か2回(春・夏期)窒素成分で各6kg/10a程施用し、放牧は春、夏、晩秋の年3回程度実施し、毎回、できるだけ短く採食させる。
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[具体的データ]
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表1 播種牧草の発芽状況

表2 播種翌年(利用初年目)・利用2年目における現存量(DMkg/a)

表3 牧養力の推移(CD/ha)

図1 利用TDN収量の比較(利用2年目)
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[その他]
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研究課題名:シードペレット等を活用した放牧地の周年利用技術の確立
予算区分 :受託研究(日本草地畜産種子協会:周年利用可能草地技術開発事業)
研究期間 :1998〜2001年度