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カチオンアニオンバランス(DCAD)調整剤の給与形態別添加による効果

［要約］
クローズアップ期の飼料にDCAD調整剤として硫酸カルシウムを添加し、TMRおよび分離給与方式で給与した場合、両方式の嗜好性に差はなく、尿pHもDCAD調整の適正値を維持。また、両方式とも分娩前後の血中Ca値の低下度合いは小さく、PTHの反応も良好であり低Ca血症発生防止に有効である。

［キーワード］
DCAD調整、硫酸カルシウム、TMR、分離給与

［担当］
佐賀県畜産試験場・大家畜部・乳牛飼料研究室 

［連絡先］電話0954-45-2030	
［区分］九州沖縄農業、畜産・草地（乳牛）	
［分類］技術・参考

［背景・ねらい］
乳牛における低Ca血症(乳熱)の発生は、分娩後の乳生産性の低下や他の周産期病を誘発して乳牛の生涯生産性低下の一因となる。このため、分娩前の給与飼料にDCAD調整剤の添加が低Ca血症の発症率を低減すると言われており、多数種のDCAD調整剤が紹介されている。しかし、その利用に当たっての給与形態の違いによる有効性は明確にされていない。そこで、数多くある調整剤の中から硫酸カルシウムを用いTMRおよび分離給与の給与形態別添加によるDCAD調整の効果を明らかにする。

［成果の内容・特徴］
  1. 供試牛は、表1に示す6頭を用い分娩用単房で飼養し、給与飼料は表2に示とおりの構成のもので、TMRはコンプリトフィダーで混合後に、分離給与では硫酸カルシウムと濃厚飼料を飼料攪拌機で混合したものを粗飼料の上に重層して給与した。

  2. 乾物摂取量は、図1に示すとおりTMR区および分離区とも同様の傾向で推移し、両区間に差はみられず嗜好性に問題はない。

  3. イオンバランス調整のモニターである尿pHは、両給与区ともに試験開始前の8.5から6.0〜6.5に低下維持し、DCAD調整は良好である（図2）。

  4. 血中Ca値は、両給与区ともに分娩1日前から低下し、分離区は分娩後1日目に最低値(8.1±0.4mg/dl)となり、TMR区では分娩後2日目に最低値(7.9±0.3mg/dl)を示したが、いずれも潜在性低Ca血症(&st;7.5mg/dl)の数値以上であり、低Ca血症の発症防止効果がある（図3）。

  5. PTH値は、分娩前後の血中Ca値の低下に伴い上昇しており、上皮小体の機能は健全である（図4）。

［成果の活用面・留意点］
  1. DCAD調整剤の利用法の参考として活用できる。

  2. 分離給与のDCAD剤添加は、給与飼料に振りかけるだけでは飼槽底面に残ることがあるので、飼料撹拌機等を利用し濃厚飼料中に十分混合する工夫が必要である。

［具体的データ］

表1　供試牛の概要


表2　給与飼料の内容


図1　給与形態別乾物摂取量の推移


図2　給与形態別による尿pHの推移


図3　血中Caの推移


図4　PTHの推移

［その他］ 
研究課題名：乳牛の生涯生産性向上のための飼料給与技術
予算区分　：助成試験（地域基幹）
研究期間　：1999〜2003年度