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黒毛和種雌牛の繁殖性に対するβ-カロチン給与効果


[要約]
黒毛和種雌牛において、稲わらのみを粗飼料として連続給与した場合、分娩後に繁殖障害の発生率が高くなる。一方、乾草やサイレージを給与することにより、血漿中のβ-カロチン濃度を200μg/dl以上に維持すると、分娩後の繁殖機能の回復は早く、受胎成績は向上する。

[キーワード]
黒毛和種雌牛、β-カロチン、繁殖機能

[担当]
佐賀県畜産試験場・大家畜部・肉用牛研究室

[連絡先]電話0954-45-2030	
[区分]九州沖縄農業・畜産・肉用牛	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
黒毛和種雌牛の繁殖管理面において、ビタミン類やミネラル等の豊富な良質粗飼料を給与することは大変重要なことである。しかしながら、本県は、全国有数の稲作地帯で、米麦・大豆等の他作物との競合などから良質粗飼料を充分に確保することは困難であり、繁殖経営においては稲わら・濃厚飼料を中心とした飼料給与体系が大勢を占めている。このため、現行の稲わら主体の粗飼料給与法では、繁殖牛の生理面において重要な役割を担うβ-カロチンなどが不足することから、受胎率等の繁殖機能に何らかの支障を来しているものと考えられる。そこで、β-カロチンに乏しい稲わらを連続給与した場合の繁殖への影響を調査するとともに、黒毛和種雌牛の繁殖機能を維持する上で必要なβ-カロチン給与量について検討を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 繁殖牛にβ-カロチン含量が少ない稲わら(0.5mg/kg)のみを粗飼料として連続給与した場合、分娩を契機にビタミンAが欠乏状態になり、その後、卵巣機能不全など繁殖障害の発生率は高くなる。(表1,表2,表3図1,図2,図3

  2. ビタミン欠乏に陥りやすい分娩前から次回受胎までの間に、β-カロチン含量の高いイタリアンサイレージ(11.3mg/kg)を給与するなどして、血漿中のビタミン濃度を高めてやると、繁殖機能を適正に維持できる。(表3図1,図2

  3. 受胎率を高めるためには、分娩前後を中心に日量100mg以上のβ-カロチンを給与し、血漿中のβ-カロチン濃度を200μg/dl以上維持する必要がある。(表2図3

[成果の活用面・留意点]
  1. 分娩間隔の短縮など繁殖性向上のための粗飼料給与技術として活用できる。

  2. 今回の試験は、超早期離乳により哺育管理を実施したが、自然哺乳で管理した場合は授乳によるビタミンの損耗がさらに大きいことから、βカロチンの摂取量を増やさないと適正な繁殖性を維持できない恐れがある。

[具体的データ]

表1 供試飼料成分


表2 飼料摂取量


表3 繁殖成績


図1 βカロチンの推移


図2 ビタミンAの推移


図3 分娩時の血中ビタミン濃度と受胎(80日以内)との関係

[その他]
研究課題名:肉用繁殖牛の生産性向上に関する試験
予算区分 :県単
研究期間 :1998〜2001年度