採卵鶏の低リン植物性蛋白質飼料におけるフィターゼ添加水準の検討
- [要約]
- 採卵鶏の低リン植物性蛋白質飼料にフィターゼを150単位/kg添加すると、動物性蛋白質飼料を給与した場合と同等の卵の生産性を維持でき、リン排泄量は約20%低減し、リン利用率は向上する傾向にある。
- [キーワード]
- 採卵鶏、非フィチン態リン、フィターゼ、植物性蛋白質飼料、リン利用率
- [担当]
- 福岡農総試・畜研・中小家畜部・家禽研究室
[連絡先]電話092-925-5177
[区分]九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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環境問題への関心の高まりにともない、環境負荷の軽減は養鶏業にとっても重要な課題となっている。このため、環境負荷物質の一つであるリンについても、給与量と排泄量を減少させる飼料給与技術が求められている。一方、魚粉の高騰等による動物性蛋白質資源の利用減少により、植物性蛋白質飼料を給与する必要性が高まってきている。しかし、植物性蛋白質飼料は消化性の低いフィチン態リンを多く含んでいるため、リンが有効利用されずに排泄されている。このフィチン態リンの消化性を向上させる酵素としてフィターゼが販売されているが、その標準的な添加水準は500単位/kgと高く、飼料価格も割高となる。そこで、卵の生産性を維持しつつ、リン排泄量の低減を可能とする、より効果的なフィターゼの添加水準を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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大豆粕とコーングルテミールを蛋白源とした低リン植物性蛋白質飼料(非フィチン態リン0.16%)にフィターゼを150単位/kg添加すると、魚粉を蛋白源とした動物性蛋白質飼料(非フィチン態リン0.36%)を給与した場合と同等の卵の生産性を維持できる(表1、表2)。
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フィターゼを添加していない低リン植物性蛋白質飼料を給与すると、動物性蛋白質飼料に比べ、産卵率が減少し、破卵率は特に産卵後期に増加する。しかし、フィターゼを75単位/kg以上添加すれば産卵率は改善され、150単位/kg以上添加すれば破卵率の上昇も軽減される(表2、図1)。
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リン排泄量は、動物性蛋白質飼料に比べ低リン植物性蛋白質飼料のフィターゼ無添加区で約10%、75、150単位/kg添加区では約20%低減する。蓄積リン率はフィターゼを添加することにより高くなる傾向にあり、フィターゼ添加により飼料中リンが有効に使われている(図2、図3)。
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卵を1kg生産するために必要な飼料費は、低リン植物性蛋白質飼料にフィターゼを添加しても、動物性蛋白質飼料よりも5円〜7円安くなる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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採卵鶏に植物性蛋白質飼料を給与する場合の技術資料として活用できる。
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[具体的データ]
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表1 飼料配合

表2 21〜64週齢までの産卵成績(2000年10月11日〜2001年8月15日)

図1 破卵率の推移(21〜64週齢)

図2 動蛋を100としたリン排泄量の比較(29、45、61週齢平均)

図3 蓄積リン率(29、45、61週齢の平均)
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[その他]
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研究課題名:フィターゼ添加による植物性蛋白質利用率向上技術
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2001年度