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超急速冷却法を用いた豚胚の保存・移植技術


[要約]
耐凍剤に6Mエチレングリコール+1Mガラクトース+7%ポリビニールピロリドンを用いガラス化保存された豚胚の融解(加温)後の生存性は高く、同耐凍剤を用い超急速冷却し、加温した胚の外科的移植により、75%の受胎率で産子(平均6.7頭)が得られる。

[キーワード]
豚胚、ガラス化保存、超急速冷却法、外科的移植

[担当]
熊本農研セ・畜研・中小家畜部

[連絡先]電話096-248-6433	
[区分]九州農業・畜産草地(中小家畜)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
豚胚の凍結保存技術は、優良遺伝子の保存等に有用な手段であり、様々な目的に利用される可能性を含んでいる。しかし、豚胚の利用には、外科手術に頼る採胚、移植手法とともに、その凍結保存の困難性という基本的な問題が存在する。この問題に対し、近年、細胞内に氷晶を形成させず、凍結による胚の損傷軽減を可能とするガラス化法による冷却保存胚移植の成功が報告され、豚胚移植の利用価値を高める技術として期待されている。

そこで、ガラス化保存技術(急速および超急速冷却法)の改善により、胚の生存性および移植による産子生産性を向上させることを目的とする。

[成果の内容・特徴]
  1. 急速冷却法においては、豚胚冷却時の耐凍剤に6Mエチレングリコール(EG)+1Mガラクトース(Gal)+7%ポリビニールピロリドン(PVP)を用いた方が、8MEG+7%PVPと比較して、加温後の生存性が高い。また、直径が199mm以下の拡張胚盤胞の加温後の生存性は著しく低下する(表1)。

  2. 超急速冷却法は、急速冷却法と比較して、胚の冷却、加温後の生存性を向上させる{10%牛胎児血清(FBS)加mCZBにて摂氏37度、5%O2、5%CO2、湿度飽和の気相で48時間培養}(表2)。

  3. 超急速冷却法により冷却保存した胚を外科的に移植することで、75%の受胎率で産子(平均6.7頭)が得られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 超急速冷却法を用いて冷却保存した胚の加温、培養後の生存率と移植における受胎率が良好なことから、豚胚の保存手段として利用できる。

  2. 胚の耐凍性には個体差が存在するため、移植には供胚豚ごとにサンプルの冷却、加温後の生存率を評価し、良好な供胚豚のものだけ移植を実施する必要がある。

[具体的データ]

表1 胚のランク別、耐凍剤別生存成績


表2 冷却方法の違いによる加温後の胚の生存成績


表3 移植成績

[その他]
研究課題名:豚胚の凍結・移植技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2002年度