バイオプシー済み牛性判別胚のガラス化保存および移植後の受胎率
- [要約]
- PCR法により性判別した牛胚を一般農家の牛93頭に移植した結果、新鮮胚移植(12頭)の受胎率は50.0%、ガラス化保存胚の受胎率は56.8%であった。また、ガラス化保存胚の受胎率は、保存前の発育ステージが進むに従い低下する傾向が見られた。
- [キーワード]
- 受精卵、性判別、ガラス化保存
- [担当]
- 宮崎県優良家畜受精卵総合センター
[連絡先]電話0984-42-3044
[区分]九州沖縄農研・畜産草地(動物バイテク)
[分類]技術・参考
-
[背景・ねらい]
-
牛胚の性判別技術は酪農家及び肉用牛農家にとって大変望まれている技術である。そこで、PCR法を用いた性判別技術及びバイオプシー胚のガラス化保存技術が効率的に性判別胚を生産・供給する有効な技術になり得るか検討した。
-
[成果の内容・特徴]
-
-
過剰排卵処理によって採取した後期桑実胚〜拡張胚盤胞期の胚をバイオプシー(金属ブレードで胚の10%程度をPCR用として切断・分離)しても3〜5時間培養後の生存率は99.0%ありバイオプシーが胚の生存性に与える影響はわずかであると考えられる(表1)。
-
性判定成功率は87.0%(254/292頭)であり、性比は雄54.7%、雌45.3%とわずかに雄が多い(表2)。生産された子牛23頭の性の一致率は95.7%(22/23)で良好である。
-
新鮮胚およびガラス化保存胚の受胎率は、それぞれ50.0%(6/12頭)および56.8%(46/81頭)で良好である(表3)。
-
ガラス化保存前の発育ステージ別の生存率はいずれも90%以上であるが、受胎率は発育ステージが進むに従い低下する傾向が見られる(表4)。
-
ガラス化保存胚の採卵時ランク別受胎率には差が認められない(表5)。
-
[成果の活用面・留意点]
-
-
PCR法による胚の性判別技術は性判定成功率及び性の一致率が高く、信頼性の高い性判別法である。
-
性判別の為にバイオプシー後にガラス化保存した胚でも融解後段階希釈することで新鮮胚同様の高い受胎率が望める。
-
低ランク胚でも変性細胞のみ利用したり、培養により発育を促すことで性判別に利用できる可能性がある。
-
ガラス化保存前の発育ステージが進んでいない胚を用いた方が高い受胎率が望める。
-
[具体的データ]
-

表1 バイオプシー後の生存率

表2 PCR法*による胚の性判定成功率

表3 性判別胚の移植成績

表4 ガラス化保存前の発育ステージ別生存性及び受胎率

表5 ガラス化保存胚における採卵時のランク別受胎率
-
[その他]
-
研究課題名:牛受精卵の性判別技術実用化試験
予算区分 :国庫
研究期間 :2001年度