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牛末梢血リンパ球画分の熱ショックタンパク質(HSP)発現評価法


[要約]
牛から採取した血液に摂氏43度、30分の熱ショックを与え、摂氏38度、6時間培養後に比重遠心法で回収したリンパ球画分と無処理区のHSP発現比率からHSP発現誘導比が評価できる。

[キーワード]
乳牛、耐暑性、熱ショックタンパク質

[担当]
九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・環境生理研究室

[連絡先]電話096-242-7748	
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)	
[分類]科学・参考	

[背景・ねらい]
HSPの発現量が多い細胞、個体は環境温度の上昇に対して抵抗性を示す。泌乳牛は高温環境による生産性低下が著しいので、このHSPの潜在的な発現能力が耐暑性の生理的指標になる可能性が高い。そこで、乳牛の生産性に影響を与えることなく、乳牛個体由来の細胞を用いて各種HSPの潜在的発現能力評価法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 乳牛の頸静脈から採取したヘパリン血に熱ショックとしての高温処理を行い、その後熱ショックにともない特異的に合成されてくるHSPと無処理区HSPをウェンタンブロットで検出し、両者の比をHSP発現誘導比とする(図1)。

  2. 熱ショックとして摂氏38度、摂氏41度、摂氏43度および摂氏45度で30分の処理を行い、比重遠心法で回収したリンパ球画分の生存率は摂氏45度処理で顕著に低下する。

  3. 全血に対して摂氏38度、摂氏41度、摂氏43度および摂氏45度で30分の処理を行い、その後摂氏38度、6時間培養後に回収したリンパ球画分の各種HSPは摂氏43度処理でHSP27、摂氏45度でHSP72がそれぞれ最大となる(図2)。

  4. 全血に対する摂氏43度の高温処理時間の長さについては、30分から60分の処理時間が適当である(図3)。

  5. 回収したリンパ球の生存性および測定に要する時間の観点から、採取したヘパリン血全血に対して摂氏43度、30分の高温処理を行い、その後摂氏38度、6時間培養後、比重遠心法により回収したリンパ球画分中の各種HSP発現量と無処理区との比をHSP発現誘導比とすることが適当である。

[成果の活用面・留意点]
  1. リンパ球画分の比重域が類似している他の家畜にも応用可能である。

  2. HSPの発現誘導比は、採血時における乳牛個体の生理状態に依存する可能性があるので複数回の発現誘導比測定を持って評価することが望ましい。

[具体的データ]

図1 乳牛末梢血リンパ球画分の発現誘導比評価法


図2 HSPの発現に及ぼす高温刺激の影響(処理時間30分)


図3 HSPの発現に及ぼす高温処理時間の影響(摂氏43度)

[その他]
研究課題名:乳牛の高温環境に対する熱ショックタンパク質の誘導と高温耐性機能
課題ID:07-04-05-*-10-02
予算区分 :交付金
研究期間 :1998〜2002年度