牛生体採取卵子を用いた良質体外胚生産のための体外培養法
- [要約]
- 生体採取した牛卵子を体外成熟後、発生1日まで無血清培地(IVMD101)で培養し、発生3日または5日まではグルコースを含まない血清添加修正199培地、その後は血清添加199培地で培養するすることで、効率よく良質胚が生産できる。
- [キーワード]
- 牛、体外胚、生体採取卵子、培地
- [担当]
- 福岡農総試・畜研・大家畜部・畜産工学研究室
[連絡先]電話092-925-5232
[区分]九州沖縄農業・畜産草地(動物バイテク)
[分類]科学・参考
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[背景・ねらい]
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牛の体内胚採取技術とともに、近年、超音波診断装置を利用して生体から卵子を採取し、体外受精して体外胚を生産する技術が確立されつつあり、血清無添加の体外培養キットも市販されている。しかし、未だに胚盤胞発生率(生産率)が低いため、現場段階において生体卵子採取技術が利用される場面は少なく、過排卵処置に反応しない遺伝的に価値の高いドナーの産子生産に限られているのが現状である。
そこで、生体から採取した少数の卵子を用いて、市販培養培地を用いて、効率的な体外胚培養技術を検討する。
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[成果の内容・特徴]
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と畜卵子を用いて、体外胚発生の培地選択とその組み合わせのスクリーニング試験した結果、体外成熟から発生1日までは無血清培地を用い、その後、発生3日または5日まではグルコースを含まない血清添加修正199培地で、その後は血清添加199培地で培養することにより、高い胚盤胞発生率(26%)と良質胚率(16%)が得られる(表1)。
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生体から採取する少数卵子は、体外成熟から発生1日までは無血清培地を用い、発生3日または5日まではグルコースを含まない血清添加修正199培地で、その後は血清添加199培地で培養すると良質胚(良質胚率:19%)を効率的に生産できる(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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胚移植機関で、生体採取卵子から体外胚を効率的に生産する技術として活用できる。
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一般に生体採取卵子の体外発生には共培養系と非共培養系を組み合わせるが、当体外胚生産は一貫して同一気相条件下で培養可能なため、一台の培養器で済み、経済的である。
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[具体的データ]
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表1 培地の組み合わせがと畜卵子の胚発生に及ぼす影響

表2 生体採取卵子の体外胚発生
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[その他]
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研究課題名:超音波診断装置を利用した効率的胚生産技術の確立
予算区分 :国庫(畜総)事業
研究期間 :1999〜2001年度